聖母マリアの肖像(筆者撮影)
近年施行された改正出入国管理法による外国人の在留資格の拡大を踏まえ、外国からの労働者受け入れが、人手不足が深刻な職業分野を中心に加速していくことが予想される。この動きに呼応するかのように、偏狭な移民排斥主義やナショナリズムが社会のあちこちに跋扈(ばっこ)しつつもある。
高齢化や人口減少に伴う労働力不足を解決するために活用する「外国人材」という視点ではなく、日本社会を、創造的かつ、豊かに読み替えていく主体としての移民に目を向け、歩み寄り、そこから日本における「多文化共生」の未来を考えていくことは可能だろうか。
私は2001年より、エチオピア連邦民主共和国において、世襲の音楽職能集団を対象とした映像人類学研究を行ってきた。様々な儀礼や生業の場において、人々との濃厚なやりとりに基づき、歌を通して世界を異化していく音楽集団のしたたかさ、しなやかさに魅了され、その様子を映像民族誌におさめ、学術映画祭等の場で発表してきた。
パンデミック期間、エチオピアへの渡航を控えていた時期はあったものの、現在に至るまで、年に数回はエチオピアに通いフィールドワークや映像制作を継続している。
そんななか、東京都葛飾区及び、墨田区界隈に、エチオピア移民が200人近く居住していること、さらに2009年から、この地域で日本で唯一のエチオピア正教会集会が行われていることを在日エチオピア大使館の職員を通して知った。
エチオピア正教会は、その起源を4世紀にまでさかのぼり、聖母マリアを信仰の基軸とする歴史の古い教派だ。1970年代前半まで続いたエチオピア帝国時代においては国教であり、今日もエチオピア北部を中心に人口の半分近くの信者が存在し、庶民の生活や思考様式に極めて大きな影響を持つ。
葛飾区ではまた、エチオピア新年(エチオピアは独自の暦を持ち新年は9月)や祭日などに、NPO法人アデイアベバ・エチオピア協会主催による地域住民とエチオピア移民の交流会も盛んに行われている。
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