最新記事
自由民主主義

トランプが既存秩序を破壊し「自由主義の西側世界」が消える前に

THE END OF THE LIBERAL WEST

2024年12月3日(火)12時11分
ヨシュカ・フィッシャー(元ドイツ外相)
ベルリンの壁崩壊30周年の記念式典で花を供える各国首脳

ベルリンの壁崩壊30周年の記念式典で花を供える各国首脳 ARTUR WIDAKーNURPHOTOーREUTERS

人は誰もが特定の知的枠組みの中で考え、語り、物を書く。その枠組みは、当然のものとされがちだ。だが慣れ親しんだ分類や概念は、時の経過とともに廃れる。一例が「ソ連」で、今や歴史家しか振り返らないだろう。

そうした意味で、ドナルド・トランプ前米大統領が勝利した今年の米大統領選は2024年の最も重要な政治的事件であり、歴史の転換点として記憶されるのはほぼ確実だ。今回の結果は、これから数十年間の世界の出来事を形作ることになる。


その影響は2つの面に表れるだろう。

1つ目は、より実際的で日常的な領域だ。トランプは既に、中国への追加関税と、メキシコとカナダからの輸入品にも関税をかける方針を表明している。パリ協定から離脱し、不法移民の一斉追放に乗り出す事態も予想される。それが意味するのは、世界1位の超大国の国家運営と、この国が象徴するものの抜本的転換である。

2つ目は国際的な領域だ。重大なパワーシフトや長年の同盟関係の解消、国際機関・基準の崩壊など、さまざまなシナリオが想定される。ウクライナはどうなるのか。アメリカは同盟相手のEUなどを度外視して、ロシアに接近するのか──。

民主主義的制度を軽視し、2020年大統領選の結果を覆そうとし、不倫の口止め料支払いをめぐる事件の罪状34件で有罪になったにもかかわらず、トランプは大統領選で圧勝した。支離滅裂な統治姿勢や「虚言癖」は周知の事実でも、激戦州全てで勝利した。

農業
日本の技術で世界の干ばつ解決へ...ナガセヴィータの研究者に聞く「糖」の意外な活用法
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエルがフーシ派を攻撃、イエメン首都の空港など

ワールド

イラン大統領、1月にロシア訪問 協力協定署名へ=報

ワールド

カザフの旅客機墜落、ロシア防空システムの関与示す兆

ワールド

インド政府、経済成長率6.5%程度と予想 従来見通
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2025
特集:ISSUES 2025
2024年12月31日/2025年1月 7日号(12/24発売)

トランプ2.0/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済/AI......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 2
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3個分の軍艦島での「荒くれた心身を癒す」スナックに遊郭も
  • 3
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部の燃料施設で「大爆発」 ウクライナが「大規模ドローン攻撃」展開
  • 4
    「とても残念」な日本...クリスマスツリーに「星」を…
  • 5
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 6
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 7
    日本企業の国内軽視が招いた1人当たりGDPの凋落
  • 8
    滑走路でロシアの戦闘機「Su-30」が大炎上...走り去…
  • 9
    なぜ「大腸がん」が若年層で増加しているのか...「健…
  • 10
    世界がまだ知らない注目の中国軍人・張又俠...粛清を…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 4
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 5
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 6
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 7
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 8
    9割が生活保護...日雇い労働者の街ではなくなった山…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 4
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 7
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 8
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 9
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 10
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中