最新記事

集団免疫

集団免疫は人口の60%ではなく47%で獲得できる?──米研究

U.S. Could Reach Herd Immunity with 47 Percent Infection Rate, Study Finds

2020年10月13日(火)16時50分
アリストス・ジョージャウ

「人は限られた集団としか交流しないものだ」と研究チームは指摘 Mike Segar-REUTERS

<「人が均一に交わる」ことを前提とした従来の数理モデルと異なり、「人々が親しい人とのみ交流する」ことを前提に集団免疫の獲得に必要な感染レベルを算出>

アメリカは人口の約47%が感染した段階で、新型コロナウイルスの集団免疫を獲得する可能性がある──米医療保険会社ユナイテッドヘルス・グループ(ミネソタ州)の研究部門のチームが、このような推定を発表した。

研究者たちはプレプリント(ほかの研究者による査読が済んでいない段階の)の研究報告の中で、アメリカが同ウイルスのパンデミック(世界的大流行)を切り抜けるのに必要な集団免疫について、よく言われる人口の60%以上という「古典的な」推定よりもずっと低い水準で達成できる可能性があるとの所見を示した。

新型コロナウイルスのパンデミックのなか、人々が均一に交わらない、つまり少数の親しい人とのみ交流すると仮定した場合、どの程度の集団免疫が必要なのか。それを解明するために、研究チームはアメリカ各地の複数の郡のデータを使用して、パンデミックが今後どのように展開していくかのコンピューター・シミュレーションを行った。その結果、集団免疫に必要な感染レベルは郡によって大きく異なるが、人口の多寡を考慮に入れて計算すると、アメリカでは総人口の47.5%が感染すると集団免疫が達成される可能性があることが示唆された。

「人の集団は均一ではない」

ユナイテッドヘルス・グループ公衆衛生部門の責任者で、同報告書の著者であるイーサン・バークは本誌に対して、「研究の目的は、人々が均一に交わらなかった場合、それが集団免疫にどのような影響を及ぼし得るかを検証することだった」と述べた。「そこで得られた重要な発見は、集団免疫獲得のための感染レベルは、これまでの古典的な推定値よりも低い水準である可能性が高いということだ」

またバークによれば、パンデミックの最終段階では、複数の異なる地域で感染の「爆発」や「急増」が起きることも予想される。「集団免疫が達成された後でも、複数の異なるコミュニティーで異なる時期に、感染の拡大が起きるだろう」と彼は述べた。

従来の感染症数理モデルは、全ての人が同じ確率で新型コロナウイルスに感染する(あるいはほかの人に感染させる)と想定している。言い換えれば、全ての人が均一に交わることを想定している。

だが現実には、人の集団は「不均一」であり、人々は限られた集団としか交わらない。それを考慮に入れて計算すれば、通常考えられているよりも低い感染レベルで集団免疫が獲得される可能性があり、このことは公衆衛生にとって「重要な意味」があると研究チームは指摘した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノルウェー、連立離脱で内閣改造 財務相に人気の前N

ビジネス

配車アプリのグラブとGoTo、合併交渉=関係筋

ワールド

中国、米に最大15%の報復関税 グーグル独禁調査や

ワールド

中国、タングステンなど金属5品目に輸出規制 米関税
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国経済ピークアウト
特集:中国経済ピークアウト
2025年2月11日号(2/ 4発売)

AIやEVは輝き、バブル崩壊と需要減が影を落とす。中国「14億経済」の現在地と未来図を読む

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我との違い、危険なケースの見分け方とは?
  • 4
    老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌…
  • 5
    マイクロプラスチックが「脳の血流」を長期間にわた…
  • 6
    中国AI企業ディープシーク、米オープンAIのデータ『…
  • 7
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 8
    脳のパフォーマンスが「最高状態」になる室温とは?…
  • 9
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 10
    メーガン妃からキャサリン妃への「同情発言」が話題…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 8
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 9
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 10
    老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 10
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中