最新記事

日本経済

直前まで存在した黒田退任=本田日銀総裁案 強い安倍首相の脱デフレ決意

2018年2月27日(火)17時34分

2月27日、世界的な株安に見舞われる中で政府が提示した日銀人事案は、財務省、日銀、学者枠を踏襲した「手堅い」布陣だった。写真は、正式な政府の発表直前まで、総裁に起用する案が消えていなかった本田悦朗駐スイス大使。都内で2016年3月撮影(2018年 ロイターS/Toru Hanai)

世界的な株安に見舞われる中で政府が提示した日銀人事案は、財務省、日銀、学者枠を踏襲した「手堅い」布陣だった。だが、正式な政府の発表直前まで、本田悦朗駐スイス大使を総裁に起用する案が消えていなかったもようだ。安倍晋三首相の「脱デフレ」への決意は強く、物価2%達成まで出口戦略の検討は封印される可能性が高まっている。

政権内で早くから浮上していた黒田続投案

政府が16日に提示した人事案は、日銀総裁に黒田東彦氏を続投させ、副総裁に若田部昌澄早大教授、雨宮正佳日銀理事を起用する内容だった。

マーケットは「織り込み済み」との反応が多く、株や為替で大きな値動きはなかった。

だが、複数の関係者によると、年明けになっても最高人事権者である安倍首相の「本音」が周辺に打ち明けられず、5年前に乱れ飛んだメディアによる「人事観測」報道も鳴りを潜め、奇妙な静けさが続いた。

政権中枢では早い段階から「黒田続投論」が多かった。「安倍首相の国会答弁やメディアを通じた情報発信以上に『総理からの信認は厚い』」(官邸周辺)とみられていたためだ。

また、与党関係者の一人は「麻生太郎財務相は黒田氏を推していた。『デフレではない状況を作り出した。ほかに誰がいる』と、政策運営に信頼を置いていた」と解説する。別の政府・与党関係者は「昨年夏ごろには、続投の方向がかなり高まっていた」と明かす。

だが、今年1月になっても、安倍首相は「黒田続投」の確定ボタンを押していなかったもようだ。

ある政府関係者は「ギリギリの段階で、総理の本音はわからなかった」と話す。

本田氏の処遇で思惑交錯

一方で、大胆な金融緩和の継続と機動的な財政出動を求めているリフレ派は、本田氏の総裁就任を強く求めていた。

リフレ派の理論的な支柱である元日銀審議委員の中原伸之氏は「黒田氏は財政緊縮の主張だから、総裁続投に反対した」と言明。

同じく安倍首相のブレーンである浜田宏一内閣官房参与は、本田氏について「日本経済を外国の人に説明する経済外交官として抜群の人材だと思っている。BIS(国際決済銀行)に同行して彼の力量に感心したことがある」と高く評価していた。

このようなリフレ派の見解は、複数のルートで安倍首相に伝わったとみられている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏「ウクライナに耳を傾けて」、会談決裂

ワールド

インド10─12月GDP、前年比+6.2%に加速 

ビジネス

中国2月製造業PMIは50.1、3カ月ぶり高水準 

ワールド

韓国輸出、2月は1%増に回復も予想下回る トランプ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:破壊王マスク
特集:破壊王マスク
2025年3月 4日号(2/26発売)

「政府効率化省」トップとして米政府機関に大ナタ。イーロン・マスクは救世主か、破壊神か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 3
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身のテック人材が流出、連名で抗議の辞職
  • 4
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 5
    米ロ連携の「ゼレンスキーおろし」をウクライナ議会…
  • 6
    日本の大学「中国人急増」の、日本人が知らない深刻…
  • 7
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 8
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 9
    【クイズ】アメリカで2番目に「人口が多い」都市はど…
  • 10
    東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チームが発表【最新研究】
  • 3
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映像...嬉しそうな姿に感動する人が続出
  • 4
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほ…
  • 5
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
  • 6
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身…
  • 7
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 8
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 9
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 10
    東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中