最新記事

日韓関係

慰安婦問題をこじらせる韓国の二元論

2018年2月8日(木)18時00分
ジョセフ・イ(漢陽大学准教授)

韓国メディアは、政府が終戦後に米軍向けの慰安所を管理したことや、ベトナム戦争で韓国兵が地元女性に働いた蛮行にほとんど触れない。ソーの英語の著書を翻訳出版しようという動きも出ていない。

ソウル地裁は朴裕河の著書の一部が虚偽だとして、名誉毀損で9000万ウォン(約915万円)の罰金を科した。ソーの本を授業で取り上げた韓国系アメリカ人の教授は厳しい批判にさらされ、謝罪文を書いた。

こうした一連の出来事は、韓国が独裁的でナショナリスト的な思考に陥り、自国を罪のない被害者と考えていることを示す。一方で反日的な発言をすべからく批判する姿勢も、韓国の倫理的な指導力を損なう。豊かでリベラルな選択肢があるなら、愛国心と複雑な過去の思慮深い分析を両立させられるだろう。

市民に多角的な情報を与えることは、民主政治と分別のある政策決定に欠かせない。「被害者の物語」に対する批判や議論が、国の戦略的な利益と普遍的な正義につながる。

本誌2018年2月13日号[最新号]掲載

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

From thediplomat.com

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

アングル:「ドル等価」目前のユーロ、急反転で市場混

ビジネス

ブルーバード遺伝子治療、FDAが規制措置の要否検討

ワールド

韓国中銀、15年ぶり2会合連続利下げ トランプ氏復

ワールド

トランプ政策で一段とインフレ不安定も、NZ中銀幹部
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式トレーニング「ラッキング」とは何か?
  • 3
    黒煙が夜空にとめどなく...ロシアのミサイル工場がウクライナ無人機攻撃の標的に 「巨大な炎」が撮影される
  • 4
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 5
    「健康食材」サーモンがさほど健康的ではない可能性.…
  • 6
    「健康寿命」を2歳伸ばす...日本生命が7万人の全役員…
  • 7
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 8
    バルト海の海底ケーブル切断は中国船の破壊工作か
  • 9
    未婚化・少子化の裏で進行する、「持てる者」と「持…
  • 10
    谷間が丸出し、下は穿かず? 母になったヘイリー・ビ…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 7
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 10
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式ト…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中