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ドイツゲイの新外相がもたらす意識革命
世界4位の経済大国の外相がゲイでは、同性愛を迫害する国々も下手な扱いはできない
ドイツでは9月27日の総選挙でメルケル首相が率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が第1党となり、自由民主党(FDP)と中道右派連立政権を樹立する見通しだ。新内閣で外相に就任するとみられるFDPのギド・ウェスターウェレ党首は、同性愛者であることを公表している世界初の外相になるかもしれない。
アイスランドのシグルザルドッティル首相をはじめ、ヨーロッパでは同性愛者の政治家は珍しくない。その一方で、世界には同性愛者を投獄したり拷問、殺害している国家もある。
ウェスターウェレがドイツ外交の顔になると聞けば、こうした国々は渋い顔をするかもしれない。だからこそ、彼は就任したら真っ先に同性愛者を迫害している国々を歴訪し、それぞれの国で同性愛者が置かれている状況について問題提起すべきかもしれない。
イランでは同性愛者が死刑に
まずはイランから始めてはどうだろう。アハマディネジャド大統領はかつて、自国における同性愛者の存在そのものを否定。4年前には同性愛者であるという理由で10代の若者2人が死刑になり、国際的な非難を浴びた。
イランの次は、同じく同性愛者への迫害を続けるサウジアラビアやジンバブエに向かうといい。世界4位の経済大国の外相が相手なら、どの国も下手な扱いはできまい。
たとえ同性愛の問題を取り上げなくても、ウェスターウェレが同性愛者であることは世界中の人々の知るところとなるはずだ。ゲイであることを公表している人物が公の高い地位に就くなど、多くの国では考えられないことだから、のぞき見趣味の関心を呼ぶかもしれない。だが彼が長年のパートナーとごく普通の家庭生活を営んでいることは、多くの人々の偏見を吹き飛ばすかもしれない。
ヒラリー・クリントンをはじめアメリカの歴代の女性国務長官たちは、男女平等という大義の象徴的な推進力であり、存在そのものが女性の能力の高さを裏付けるものといえる。ウェスターウェレが外相として活躍することで、世界の同性愛者に対する意識も同じように変わるといいのだが。
[2009年10月14日号掲載]