最新記事
ヘルス

免疫低下や癌リスクも...化学物質PFAS、手洗いなどで「肌から」体内に入り得ることが実験で明らかに

“Forever” Chemicals

2024年7月27日(土)16時26分
パンドラ・デワン
PFASが肌から体内に侵入する可能性

手洗いでPFASが体内に入り込む恐れもある PEOPLEIMAGES/ISTOCK

<さまざまな日用品に使われているほか、大気中や水中にも存在し得るPFASは有害性が指摘されるが、さらに新たなリスクが浮上した>

どこにでも存在する有害な化学物質PFASは、肌からでも私たちの体内に侵入する可能性がある。6月24日付の学術誌エンバイロンメント・インターナショナルで、英バーミンガム大学の研究者らがそう警告した。

PFASは人工的な有機フッ素化合物の総称で、トイレットペーパーから食品包装、化粧品までのさまざまな日用品に使われている。容易に分解せず、長期にわたり環境に残留するため、「永遠の化学物質」とも呼ばれる。


PFASは性質上、土中にも大気中にも水中にも存在し得る。アメリカ地質調査所の調べでは昨年、全米の水道水の半数近くで何らかのPFASが検出されている。

PFASを取り込むと血中コレステロールや血圧の上昇、免疫力や生殖機能の低下、ある種の癌のリスク増加などにつながることが知られており、米国有害物質・疾病登録局はPFASの安易な使用に警鐘を鳴らしている。

これまで皮膚組織を通過する可能性はないとされていた

PFASは呼吸や食物・飲料水の摂取など、さまざまな経路で体内に入ることができる。だが「分子がイオン化しているため、PFASが皮膚組織を通過する可能性はないとされていた」と、今回の論文の筆頭著者でバーミンガム大学研究員のオドネイ・ラグナースドッティルは述べている。「電荷を帯びた分子は水や汚れをはじく性質を持つので、皮膚膜を通過することはないと考えられてきたが、私たちの研究はこの仮説が必ずしも正しいとは限らないことを示している」

バーミンガム大学の研究者らは人の皮膚の3Dモデルを用いて、最も広く使用されている17種類のPFASについて実験を行い、うち15種類が皮膚を通じて吸収されることを確かめた。

この研究結果を基に、指導教官のモハメド・アブドラ准教授は次のように指摘した。

「とにかくPFASの種類は多い。だから特定の物質ではなく、さまざまな有害PFASの健康リスクを総合的に評価することが大事だ」

2024091724issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年9月17日/24日号(9月10日発売)は「ニュースが分かる ユダヤ超入門」特集。ユダヤ人とは何なのか/なぜ世界に離散したのか/優秀な人材を輩出してきたのはなぜか…ユダヤを知れば世界が分かる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米メキシコ湾岸の石油施設から作業員退避、熱帯暴風雨

ビジネス

日本投資のヘッジファンド立ち上げ活発化 投資家が市

ビジネス

HSBC、商業銀行と投資銀行の統合を検討 コスト削

ワールド

中国DJI製新型ドローン禁止、米下院が法案可決
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
2024年9月17日/2024年9月24日号(9/10発売)

ユダヤ人とは何なのか? なぜ世界に離散したのか? 優秀な人材を輩出した理由は? ユダヤを知れば世界が分かる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 2
    ロシア国内の「黒海艦隊」基地を、ウクライナ「水上ドローン」が襲撃...攻撃の様子捉えた動画が拡散
  • 3
    メーガン妃が自身の国際的影響力について語る...「単にイヤリングをつけるだけ」
  • 4
    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…
  • 5
    非喫煙者も「喫煙所が足りない」と思っていた──喫煙…
  • 6
    歯にダメージを与える4つの「間違った歯磨き」とは?…
  • 7
    「令和の米騒動」その真相...「不作のほうが売上高が…
  • 8
    伝統のカヌーでマオリの王を送る...通例から外れ、王…
  • 9
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 10
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組…
  • 1
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 2
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン」がロシア陣地を襲う衝撃シーン
  • 3
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組10名様プレゼント
  • 4
    【現地観戦】「中国代表は警察に通報すべき」「10元…
  • 5
    エルサレムで発見された2700年前の「守護精霊印章」.…
  • 6
    「令和の米騒動」その真相...「不作のほうが売上高が…
  • 7
    中国の製造業に「衰退の兆し」日本が辿った道との3つ…
  • 8
    世界最低レベルの出生率に悩む韓国...フィリピンから…
  • 9
    「私ならその車を売る」「燃やすなら今」修理から戻…
  • 10
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンシ…
  • 1
    ウクライナの越境攻撃で大混乱か...クルスク州でロシア軍が誤って「味方に爆撃」した決定的瞬間
  • 2
    寿命が延びる「簡単な秘訣」を研究者が明かす【最新研究】
  • 3
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 4
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 5
    ハッチから侵入...ウクライナのFPVドローンがロシア…
  • 6
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 7
    日本とは全然違う...フランスで「制服」導入も学生は…
  • 8
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 9
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 10
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中