コラム

世界恐慌は絶対に来ない

2020年03月27日(金)11時12分

株価はなぜ暴落と暴騰を繰り返すのか(写真はニューヨーク証券取引所、3月20日) Lucas Jackson-REUTERS

<政治家は景気の悪化をコロナショックのせいにしたがるが、これはコロナ以前からのバブルが崩壊しただけの普通の不況だ>

世界はやはり米国が中心のようだ。

新型コロナウイルスが武漢で発生しても、日本がクルーズ船を受け入れてその対処に翻弄されても、欧米は極東の疫病という扱いだった。イランがパニックになっても状況は変わらなかったが、イタリアがこのウイルスに襲われるや、雰囲気は変化をしはじめ、EUの通行の自由が欧州での恐怖を拡大した。しかし、それでも米国は高をくくっていたが、3月26日、ついにコロナウイルスのことを中国ウイルスと呼び続けていたトランプ大統領の米国の判明感染者数が中国を超え、世界最多となった。

この一週間、急に世界はコロナウイルス一色となった。やはり米国が真の恐怖に陥って初めて、問題は世界の問題としてとらえられる。米国CNNはまさに24時間、コロナウイルス、しかも米国の内部の話だけを議論し続けている。つい昨日までは、イタリアとスペインの何が問題か、という議論をしていたのだが。

米GDP成長率はマイナス30%!?

本当に人々もメディアも社会も極端だ。米国の人々は世界が終わるかのような報道を見させられている。場所が不足して、霊安所は、病院の前に横付けされたトレーラーの中が利用されているという映像を繰り返し見させられている。

1週間前から、エコノミストもようやく悲観的になってきた。そうなるとこの世の終わりのような議論を始める。米国地区連銀のブラード総裁は最悪の場合失業率30%を超えると警鐘を練らした。グレン・ハバード元大統領経済諮問委員会(CEA)委員長は、大恐慌に匹敵する可能性について議論し、米ハーバード大学のカーメン・ラインハート教授は、世界経済がこれほどのもろさを見せたのは1930年代の大恐慌以来だとの見方を示し、リーマン・ショックの時のように危機後、株価が急反発することはないと述べた。

株式市場関係者である投資銀行のエコノミストたちも恐怖の見通しのレポートを書いた。2020年4-6月期の米国のGDP成長率を、ゴールドマンサックスはマイナス24%、JPモルガンはマイナス25%、モルガンスタンレーはなんとマイナス30%と推計した。これをメディアは大きく取り上げた。しかし、その数日後、市場関係者たちは、トランプ政権が議会と合意した220兆円の経済政策を評価し、株価は史上最大の上昇となった。3日間で20%以上し、今回の暴落の半分以上を取り戻した。株式市場はすでに危機は去った。新しい儲けのチャンスに興奮しているかのような雰囲気である。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、外貨準備の必要性を疑問視 ビットコイン

ワールド

トランプ氏、人質担当特使にボーラー氏起用 中東交渉

ビジネス

韓国・現代自が時限ストへ、金属労組は大統領辞任求め

ワールド

米下院の全議席確定、共和党が僅差で過半数獲得
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
2024年12月10日号(12/ 3発売)

地域から地球を救う11のチャレンジと、JO1のメンバーが語る「環境のためできること」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや筋トレなどハードトレーニングをする人が「陥るワナ」とは
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    【クイズ】核戦争が起きたときに世界で1番「飢えない国」はどこ?
  • 4
    韓国ユン大統領、突然の戒厳令発表 国会が解除要求…
  • 5
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説な…
  • 6
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 7
    肌を若く保つコツはありますか?...和田秀樹医師に聞…
  • 8
    混乱続く兵庫県知事選、結局SNSが「真実」を映したの…
  • 9
    ついに刑事告発された、斎藤知事のPR会社は「クロ」…
  • 10
    JO1が表紙を飾る『ニューズウィーク日本版12月10日号…
  • 1
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 2
    エリザベス女王はメーガン妃を本当はどう思っていたのか?
  • 3
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや筋トレなどハードトレーニングをする人が「陥るワナ」とは
  • 4
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 5
    メーガン妃の支持率がさらに低下...「イギリス王室で…
  • 6
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説な…
  • 7
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    エスカレートする核トーク、米主要都市に落ちた場合…
  • 10
    バルト海の海底ケーブルは海底に下ろした錨を引きず…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story