コラム

【徹底解説】DeepSeek革命のすべて

2025年02月15日(土)12時34分
Deepseekのロゴ

DeeoSeekのロゴ REUTERS/Dado Ruvic/Illustration/File PhotoREUTERS/Dado Ruvic/Illustration/File Photo

<DeepSeekの生成AIが真に衝撃的なのは、「地政学」や「覇権争い」に縛られた競合大手にない「科学」発想の技術と開放性をもつことだ>

中国杭州市の投資ファンド、幻方量化(High-Flyer)は2025年1月15日に生成AIアプリDeepSeek-V3を一般向けに無料公開した。これがなんとOpenAIのGPT-4oを上回るほど賢く、しかも557.6万ドルという超低コストで作られたというので世界を揺るがす大騒動になっている。

この衝撃でAI向けIC最大手のエヌビディアの株価が1月27日には前日の142.6ドルから118.6ドルへ暴落し、時価総額にして5890億ドルが一日で蒸発した。その情報を伝えたNHKのニュースは、生成AIをめぐる米中の「覇権争い」がますます激しさを増すでしょう、と結んだ。

このニュースを聞いて2つの疑問が湧きおこった。第一に、果たしていま起きていることは米中の「覇権争い」なのだろうか。第二に、なぜICメーカーであるエヌビディアが下がるのだろうか。

まず一つめの疑問について。

たしかに生成AIを作る他の企業、たとえばChatGPTを作っているOpenAIやClaudeを作っているAnthropicなどにとって、DeepSeekの登場は衝撃であるに違いない。OpenAIやAnthropicが月18~20ドルで提供しているのと同じレベルのサービスをDeepSeekはタダで提供しはじめたのだから。

DeepSeek-V3のウェブサイトに掲載されている生成AIの能力に関する成績表によると、英語による学部生レベルの知識を問うMMLU-Proという試験ではDeepSeekは75.9点で、Claude-3.5(78.0点)よりやや低いが、GPT-4o(72.6点)を上回っている。

プロフィール

丸川知雄

1964年生まれ。1987年東京大学経済学部経済学科卒業。2001年までアジア経済研究所で研究員。この間、1991~93年には中国社会学院工業経済研究所客員研究員として中国に駐在。2001年東京大学社会科学研究所助教授、2007年から教授。『現代中国経済』『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える』『現代中国の産業』など著書多数

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

在日米軍駐留費の負担増、日本に要請の必要=グラス駐

ビジネス

金現物が最高値更新、トランプ関税巡る懸念や米利下げ

ワールド

プーチン氏、停戦巡る米提案に同意 「根源要因」排除

ワールド

米民主党主導州、トランプ政権の教育省廃止の停止求め
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    【クイズ】世界で1番「石油」の消費量が多い国はどこ?
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 5
    SF映画みたいだけど「大迷惑」...スペースXの宇宙船…
  • 6
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 7
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
  • 8
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 9
    「トランプの資産も安全ではない」トランプが所有す…
  • 10
    『シンシン/SING SING』ニューズウィーク日本版独占…
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 6
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 7
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 8
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 9
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 10
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story