コラム

英議員、コロナワクチンは「ホロコースト以来最大の犯罪」...「ワクチン離れ」に強まる懸念

2023年01月18日(水)17時48分

朝日新聞も、EMAが、追加接種を短期間で繰り返すことに懸念を示したと報道した。「短い間隔での接種ではワクチンによって体内につくられる抗体のレベルが低くなりかねない」上、「社会の疲弊を招きかねない」という。おそらくこの記事を読んだと思われる日本の方から「繰り返し接種しない方がいいの?」と筆者に問い合わせがあった。古い記事でも与えた印象はその後も独り歩きするものだ。

EMAの当時の記者会見を確かめるとカバレリ氏はこう発言している。「短い間隔で同じワクチンを繰り返し接種することは長期的に持続可能な戦略とは言えない。例えば4カ月ごとに追加接種する戦略をとると免疫反応に問題が生じる可能性があり、免疫反応 が期待するほど良好でなくなる恐れがある」

「私たちの免疫システムは抗原に対する反応を成熟させるために一定の時間を要する。時間が経つにつれ、ワクチン接種の効率が少し悪くなる可能性がある。免疫系に過剰な負担をかけないよう、繰り返し接種することに注意しなければならない」とガバレリ氏は続ける。では長期戦略は何と言っているのだろう。

パンデミックやワクチンについては丁寧に報道する必要がある

「継続的な追加接種によって住民が疲労するリスクもある。大規模な接種キャンペーンを年に何度も行うことは運用面でも困難だ。もっと間隔を空けて追加接種することを考え始める方がずっとよい。再接種が必要であれば、少なくともいくつかのリスクグループに対してインフルエンザと同じように風邪の季節に合わせて接種を行うことが望ましい」

カバレリ氏が指摘するように接種疲れが広がると、ワクチンヘジタンシーを増幅しかねない。欧州と日本では民族的なコロナ耐性も違うし、地域によって変異株が流行する時期もズレている。それぞれの国によって使えるワクチンの種類も量も、年齢や基礎疾患の有無によってリスクも異なる。だからパンデミックやワクチンについては丁寧に報道する必要がある。

コロナ封じ込めに失敗し、21万人超の死者を出した英国で暮らす筆者(61歳)はアストラゼネカ2回(21年2月11日、4月22日)、ファイザー(同年10月13日)、モデルナの2価ワクチン(昨年10月1日、原種株とオミクロン株対応)を接種し、自然感染したハイブリッド免疫保有者。ハイブリッド免疫を獲得すればコロナに感染しても数年間は重症化しないとされる。

幸いワクチン発祥の国、英国では国家医療サービス(NHS)への信頼が厚く、科学も医学もデータを収集し、ワクチンヘジタンシーが広がらないようきめ細かな広報とコミュニケーションに努めている。科学に関する事象が発生すると筆者のようなフリージャーナリストでも複数の専門家の知見に接することができる。それがワクチンへの信頼にもつながっている。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは149円後半へ小幅高、米相互関税警

ワールド

米プリンストン大への政府助成金停止、反ユダヤ主義調

ワールド

イスラエルがガザ軍事作戦を大幅に拡大、広範囲制圧へ

ワールド

中国軍、東シナ海で実弾射撃訓練 台湾周辺の演習エス
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story