コラム

LINEのAIプラットフォーム「Clova」の何がすごいのか解説しよう

2017年03月03日(金)09時11分

個人的にLINEの経営陣とは何度もお話をさせていただいたことがあるが、変なプライドで動く人たちではない。Amazonと連携するよりも、対抗してでも実現したいビジョンがあったのだと思う。

そのビジョンとは何か。それはコミュニケーションこそがボイス時代のキラーアプリの1つになるというビジョンだ。

ボイス時代のキラーアプリは何になるのか。スマホの次の時代に興味を持つ人とこれまで何度も議論を重ねてきたが、だれもが納得する明確な答えはまだ存在しない。恐らく最初にこのキラーアプリを見つけ出して普及させた企業が、ボイス時代の覇者になるのだと思う。

今のところEchoでよく使われるのは音楽再生機能や、タイマー機能。Echoで照明やテレビのスイッチを操作できたり、ピザを注文できたりもするが、そうした機能が本当に人々のライフスタイルを変えるキラーアプリになりえるのだろうか。多くの人が首を傾げる。

LINEの経営陣は、コミュニケーションこそがボイス時代のキラーアプリになるというビジョンの下、Amazonに対抗することに決めたのではないかと思う。

コミュニケーションがいつの時代もキラーアプリ

LINEの経営陣は、コミュニケーションこそがインターネットの最終目的である、と考えている。これまで何回も彼らと議論する中で、彼らが心の底からそう信じていることを感じてきた。

事実、私もネットの最終目的はコミュニケーションではないかと思っている。ネットにアクセスするデバイスが移り変わろうと、最後にはコミュニケーションのサービスやアプリで成功したところが時代の覇者になってきた。

主にパソコンでネットにアクセスしていたころ、最初は情報を整理していたYahoo!やGoogleが覇権を握った。しかし最終的には、人々のコミュニケーションの担い手であるFacebookがネット上の覇者になった。

主流デバイスがネットからスマホに移行したときも、最初はいろいろなアプリやゲームが流行った。しかしゲームの市場が一段落した今、最もユーザーが利用するのがコミュニケーションアプリ。日本を中心とするアジア地域ではLINEが圧倒的な強さを誇っている。

ボイス時代も、最終的にはコミュニケーションアプリがキラーアプリになるのではないか。LINEの経営陣はそう考えているのではないかと思う。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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