コラム

中央アジアとアフガニスタンが「中国の墓場」になる日

2021年10月16日(土)16時16分

張騫を派遣した漢王朝には中央アジアと交易する意図はなく、ライバルの匈奴(きょうど)対策にすぎなかった。匈奴は中央アジアを自身の右腕と認識していたので張騫の諜報活動も「右腕を断つ」作戦の一環だった。

今日、多くの研究者たちがいわゆるシルクロード交易を経済学的に再計算した結果、どの時代もインド・アフガンと中央アジアからヨーロッパに通ずる貿易額が大きく、中国から中央アジアへの搬出量は限られていたことが判明した。事実、歴世の中国王朝は人と物が万里の長城の最西部・嘉峪関(かよくかん)から西へ出るのを固く禁じていて、長城の目的は匈奴とその子孫の南下防衛よりも中国人の密出国を防ぐことだった。

「一帯一路」構想に中国人が狂喜乱舞するのも分かる。史上初めてカネに物を言わせて現地人を動かしているのだから。

アレキサンダー大王からロシアのツァーリ、大英帝国軍からソ連軍、そして米軍まで迎えては送り出したアフガンと中央アジア。その住民は東方からの新しい珍客、中国の振る舞いを静かに観察しているはずだ。

プロフィール

楊海英

(Yang Hai-ying)静岡大学教授。モンゴル名オーノス・チョクト(日本名は大野旭)。南モンゴル(中国内モンゴル自治州)出身。編著に『フロンティアと国際社会の中国文化大革命』など <筆者の過去記事一覧はこちら

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