コラム

日本は北京五輪ボイコットの先兵になる(はず)

2021年08月18日(水)15時03分

開催まであと半年に迫る次の冬季五輪だが TINGSHU WANGーREUTERS

<東京五輪で差別や迫害に毅然とした態度を見せた日本人が中国共産党の残虐性を看過することはない(はず)>

さまざまな批判の声が上がり続けたなかで、東京五輪は8月8日に閉幕した。

今回のオリンピックで培われた日本の正義感あふれる批判精神の矛先は、これからきっと来年の北京冬季五輪に向けられるだろう。日本人は決して弱肉強食を見て見ぬふりする国民ではない、はずだからだ。

東京五輪の開催に至るまでには、いくつもの騒動があった。東京オリンピック・パラリンピックの大会組織委員会トップである森喜朗会長が「女性のいる会議は長い」との趣旨の発言をしたと報道されると、日本の野党系の女性国会議員たちはわざわざ白い服装をまとい、アメリカにおける同志たちに倣ったようなパフォーマンスで批判。森氏を辞任に追い込んだ。

開会式を控えた直前にも正義のジャッジが下された。開会式で演奏される音楽の作曲を担当していた音楽家の小山田圭吾氏が、小学生時代に障害のある同級生をいじめていた問題が掘り起こされて辞任。さらには開閉会式をプロデュースしていた元お笑い芸人の小林賢太郎氏は、以前に「ホロコーストを揶揄」したコントを制作していたことが判明して解任された。

いじめは健全な民主主義国家であってはならないことだが、日本ではその独特な生命力が「伝統」のように社会に定着し続け、一掃は困難だった。それが国際的なイベントをきっかけに、開会式担当者の辞任にまで発展した。日本の進歩を示す新しい出来事と言えるだろう。

ホロコーストに対する揶揄は、笑って済ませられるものではない。先の戦争に対する反省も不十分だと常に隣人から厳しく追及され続けてきたのも、日本が自身の犯した犯罪を軽くみてきたからだろう。ホロコーストを働いたのはナチスドイツだが、国際社会はすぐに日本の過去と重ねて理解しようとする。日本側にも反論の余地はあるかもしれないが、人道に対する犯罪は一笑に付す材料ではない、と理解した組織委員会の対応は迅速だった。

プロフィール

楊海英

(Yang Hai-ying)静岡大学教授。モンゴル名オーノス・チョクト(日本名は大野旭)。南モンゴル(中国内モンゴル自治州)出身。編著に『フロンティアと国際社会の中国文化大革命』など <筆者の過去記事一覧はこちら

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story