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トスカーナの糸杉と救急車

奥村千穂|イタリア

イタリアで今年のクリスマスランチは可能か?

多世代で過ごすクリスマス iStock-ViewApart

毎年、12月8日のインマコラータ・コンチェツィオーネ(無原罪のお宿り)という聖母マリアにちなんだ宗教祭日にクリスマスの飾り付けをするのがイタリアでの慣わしです。それぞれの市町村でも大きなツリーを用意し、この日に賑やかな点灯式を行うのがクリスマスの定番イベントでした。今年はコロナで混雑を避けるためにも市のツリーや飾り付けを中止し、その予算を貧困家庭の救済に充てるという市町村もあるそうです。イタリア人にとって一年で一番大きなイベントであるクリスマス。クリスマスは必ず親戚一同が勢ぞろいするという毎年見られていた光景が、今年はコロナによって様変わりしそうです。今年のクリスマスは誰とどこで過ごすのか?が気になるところ。

8月のヴァカンスの間違いは繰り返さない

11月半ばにイタリア全体で4万人にまで増えた新規感染者数は、州ごとにオレンジ、イエロー、レッドで色分けをした厳しい移動制限の効果により、現在は2万人台にまで半減しました。それでも死者数、入院者数と共に新規感染者数は高く、政府の専門家グループは、クリスマスから年末年始にかけて気を緩めてしまうと第二波の原因となった8月のヴァカンスと同じように再び増加傾向に転換し、第三波を引き起こしてしまうと警鐘を鳴らしています。春のロックダウンでかなり抑え込むことができた感染者数は、8月半ばのヴァカンスで800万人が国内と近隣諸国へ移動したため、ヴァカンス後の9月には一気に国内感染が広がってしまったのです。

従って、政府としてはクリスマスから年末年始にかけて、かなり慎重な姿勢を取ることでしょう。

クリスマスは質素に過ごすことを覚悟しなくてはいけない。ダンスパーティ、宴会、ハグやキスは不可能だ。科学的な評価だけでなく、良識が必要だ。

首相ジュゼッペ・コンテはこう述べています。

クリスマスシーズンはレストランやバール、パブが再開、商店も営業時間を延長

12月3日の首相令で恐らく発表されるであろう項目の1つがバールやレストランの再開。
レッドゾーンの州では現在、食料品店など生活必需品の店のみ営業していますが、オレンジゾーンでは11月29日からやっと商店が営業を再開しました。一年で最も売上があるクリスマスシーズンに店を閉めるということは、既に大きなダメージを受けている小売業者、レストラン経営者にとって大きな打撃となります。そこで、政府は、レッドゾーンの州は除き、イタリアの大部分を占めているオレンジゾーンとイエローゾーンについては、レストランやバール、パブの昼間と夜間の営業再開、および小売店の営業時間の延長を検討しています。売上が最も上がるクリスマス前に経済を少しでも回したい、でも人々の移動は抑えなくてはいけない・・・12月3日に発表される首相令でこの2点をどう両立させるかが注目されています。

州超えは禁止、移動は州内のみ

色分けに関係なく、全ての州では、州越えをして親戚や家族に会いに行くことは出来ません。

居住地がある州内での移動については、イエローゾーンは自由、オレンジゾーンは居住地の市内であれば自由に移動が可能(市外に出る場合は通学、通勤のみ可能)、レッドゾーンについては現在のところ、通勤通学のみ外出可能で、自己申告書を携帯するという制限があります。12月3日発表予定の首相令では恐らく12月4日から19日まで期間限定で州間の移動緩和が行われ、里帰りする学生や家族に会いに行く単身者などの移動をこの期間に促し、12月20日から1月6日までのクリスマスから年末年始にかけては、完全に州間の移動をブロックするという方針を取るのではと予想されています。

同じ州内であればクリスマスの期間は家族に会いに行くことは可能。

政府はクリスマスに家族で集まる場合、最大で8人までで、特に高齢者を守りながら常識の範囲内で会うように呼びかけています。

クリスマスランチの前にコロナ検査を

今週に入り、こんな見出しの記事を見かけるようになりました。
現在イタリアでは、有料であれば、ホームドクターを通さずに、直接プライベートのクリニックでコロナ検査を簡単に行うことが可能です。クリスマスに家族と会う前に、15分で結果が分かる抗原検査をクリニックで行っておくことは、家族を守る一つの手立てでしょう。ローマでは22ユーロ前後、ミラノでは50ユーロ以上と、街によってかなり値段に差があり、4人家族だと結構な出費になります。どうしても会いたいのであれば、クリスマスの14日前から全員がそれぞれ誰にも会わずに自己隔離を行うのも1つの方法かも。

晴れて皆で会えたとしても、キスやハグは禁止。会っている間は室内でもマスクを着用して、ソーシャルディスタンシングを厳守する・・・。
ここまでして会おうと思う人がどの位いるのかは分かり兼ねますが、イタリア人のクリスマスにかける情熱は計り知れないもの。もしかしたらそれでもファミリーランチを実行してしまうかも知れません。いや、家族を大切に想うからこそ、今年は我慢して別々にクリスマスを祝いましょうという人もいるでしょう。

今年は世界中の人々にとって激動の2020年でした。家族で集まって過ごす人にも、それぞれの家で離れて過ごす人にとっても、温かく心穏やかなクリスマスでありますように・・・。

 

Profile

著者プロフィール
奥村千穂

イタリア、フィレンツェ在住歴22年。滞在型アパートメントの紹介サイト「ラ・カーサ・ミーア」を運営。イタリア語現地医療通訳。2019年より地元救急センターの救急車ボランティアに参加。近著『美しいフィレンツェとトスカーナの小さな街へ』(旅のヒントブック)。

ブログ:フィレンツェ田舎生活便り

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