コラム

日本の感染拡大の一因は「飲み会文化」

2021年05月19日(水)11時45分
周 来友(しゅう・らいゆう)
日本人、飲み会

写真はイメージです AzmanL-iStock.

<日本政府の無能無策ぶりが、もちろん最大の原因だろう。ただ、酔えば誰しも判断力が低下し、3密回避やマスク着用もどこかに行ってしまう。なぜ日本人はお酒を「自粛」できないのか>

東京・新橋駅前にあるSL広場は、テレビ番組のインタビューで定番の場所だ。

飲み会帰りのサラリーマンをつかまえて話を聞けば、カメラに向かって面白いコメントを言ってくれる。大体みんな酔っぱらっているので、口をついて出てくるのはおおよそ本音だ。

酔っぱらいの街・新橋。近くに住む友人が、「禁酒令」発令後も多くの人が缶ビール片手に路上で飲んでいると、目撃情報を送ってくれた。

自粛が得意な日本人も、お酒に関する自粛は難しいのかもしれない。

今年1月、私はこんな書き出しのコラムを書いた。

「2度目の緊急事態宣言が出された。だが、これで感染拡大を封じ込められるのだろうか。政治家も国民も真剣さが足りないように思う」
「密輸」中国製ワクチンを打つ日本の富裕層... 自己中だらけでコロナに勝てるの?

まさか4カ月近く後に「3度目の緊急事態宣言が......」と書くことになろうとは思いもしなかった。

今、状況はむしろ悪化の一途をたどっている。変異ウイルスが猛威を振るい、感染者も死者も増える一方で、近場の観光地は人出が減らず、街では人々が路上で飲んでいる。

日本政府の対応は中途半端かつ後手後手になっており、ワクチン接種率も諸外国に大きく後れを取ったままだ。

こんなことなら、もっと早い段階からロックダウン(都市封鎖)や中国式の厳しい制限を実施すべきではなかったか。民主国家の日本は国民に強制することができないのだとは分かっていたが、たとえ「人権軽視」と批判されても強制的な対策を取るべきではなかったか。

感染拡大の最大の原因は、そんな政府の無能無策ぶりだろう。

ただ、今回の緊急事態宣言で出された「禁酒令」に対する世間の反応を見て、私はこう思った。もしかすると日本人の「飲み会好き」も感染対策の足を引っ張っているのかもしれない、と。

中国人ももちろん酒が好きだが、仕事帰りに同僚と一杯引っかけるような習慣はあまりない。宴会や接待は盛んだが、客をもてなすため、あるいは相手を酔わせて判断を鈍らせるための酒席が多い。

後は週末に仲の良い友人を自宅に招いて飲むくらいだ。

だから日本人が、なぜこれほど「飲み会好き」なのか、ずっと不思議に思っていた。

夜、同僚や友人と行くのは決まって、大勢で食べて飲める居酒屋。そして皆、必ずと言っていいほど酔っぱらう。

日本で星の数ほど酔っぱらいを見てきたが、紹興酒発祥の地、浙江省紹興市で生まれ育ち、酒に強い私はいつも「なぜ弱いのに酔いつぶれるまで飲むのか」と疑問に思っていた。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ダウ436ドル安、CPIや銀行決算受

ビジネス

NY外為市場=ドル急伸し148円台後半、4月以来の

ビジネス

米金利変更急がず、関税の影響は限定的な可能性=ボス

ワールド

中印ブラジル「ロシアと取引継続なら大打撃」、NAT
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パスタの食べ方」に批判殺到、SNSで動画が大炎上
  • 2
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機…
  • 5
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 6
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中…
  • 7
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 8
    「オーバーツーリズムは存在しない」──星野リゾート…
  • 9
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 10
    歴史的転換?ドイツはもうイスラエルのジェノサイド…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story