「待遇で勝負にならず」ロシア国内で深刻化する人手不足...軍や防衛産業が働き手吸収
待遇で勝負にならず
ロシアでは何年も前から低い出生率が働き手不足をもたらしていたが、ウクライナ侵攻によって何十万人もの潜在的労働力が軍に動員され、多くの国外移住者も発生した。
しかも同時に、防衛産業が採用を急拡大し始めた。
例えばウクライナ侵攻以前は開店休業状態だった戦車部品工場には新規受注が殺到。ある民間企業の労働者の話では、多くの人が沿ボルガ連邦管区タタールスタン共和国にあるアラブガ経済特区でドローン(無人機)を組み立てる仕事を見つけた。
この労働者は「組み立て仕事の給与は(通常の)何倍も高い。そこで働いていた私の友人は忙し過ぎてお金を使う時間さえないと話していた」と明かす。
モスクワ国立大学のナタリア・ズバレビッチ教授は、民間産業が防衛産業と競争するのは難しいと指摘。防衛産業は莫大な政府予算を受け取っているので、給与を引き上げ、労働者を奪うことができると説明した。
兵士の待遇も向上している。カメンスクウラリスキーがあるスベルドロフスク州で軍に志願すれば210万ルーブル(1万8560ドル)の一時金が支給される。これはロシアの平均的な月給のおよそ25倍だ。
地元の人材あっせん業者は、顧客企業からは労働者が相次いで前線に送られ「かつて100人が働いていたが、男性は1人もいなくなった」との悲鳴が出ていると述べた。