最新記事
ウクライナ情勢

キーウの小児病院にミサイル、全国で36人死亡 ロシアが大規模攻撃

2024年7月9日(火)11時02分
キーウの小児病院

ウクライナ当局によると、8日昼間に首都キーウ(キエフ)など各地でロシアのミサイル攻撃があり、全国で少なくとも民間人36人が死亡した。写真はキーウの小児病院(2024年 ロイター/Gleb Garanich)

ウクライナ当局によると、8日昼間に首都キーウ(キエフ)など各地でロシアのミサイル攻撃があり、全国で少なくとも民間人36人が死亡した。キーウでは中心部にある小児病院が大きな被害を受け、戦争犯罪に当たるとの非難も出ている。

日中の攻撃は珍しく、キーウのクリチコ市長によると、首都に対する攻撃は2022年2月のロシアによる全面侵攻開始以来、最も規模が大きいものの1つだった。

<国連安保理、9日に会合>

国連のグテレス事務総長は、小児病院を含む医療施設への攻撃は「衝撃的」だったとし、ロシアの攻撃を強く非難。外交筋によると、国連安全保障理事会は9日午前に会合を開く。会合の開催は米英のほか、フランス、エクアドル、スロベニアが要請した。

ウクライナの検事総長は、国際刑事裁判所(ICC)のカーン主任検察官と今回の攻撃について協議したと表明。ICCと今回の攻撃に関する証拠を共有するという。

<ゼレンスキー氏、同盟国に断固たる対応呼びかけ>

ウクライナ空軍によると、飛来したミサイル38発のうち30発を防空システムで撃墜。内務相によると、キーウのほか、中部クリブイリフ、中部ドニプロに加え、東部の2都市で、住宅や医療施設を含む民間の建物50棟が被害を受けた。

ポーランドを訪問中のゼレンスキー大統領は、ウクライナの同盟国に断固たる対応を取るよう呼びかけた上で、ロシアに報復すると表明した。

保健相によると、被害を受けたキーウの小児病院は最新の設備を備えた国内最大規模の病院。5つの病棟が被害を受けた。

ロイターが入手した動画には、小児病院に向かってミサイルが空から落下し、その後大爆発が起こる様子が映っている。ウクライナ保安庁は、このミサイルはKh─101巡航ミサイルと特定した。

救急当局によると、キーウに対する一連のミサイル攻撃の2時間後に別の攻撃があり、少なくとも21人が死亡、65人以上が負傷した。2回目の攻撃のミサイルの破片が別の病院を直撃したという。

キーウではこのほか、変電所3カ所と電力網が被害を受けた。

救急当局によると、ゼレンスキー氏の出身地クリブイリフで11人の死亡を確認。47人が負傷した。東部ドネツク州ポクロウスクではミサイルがポクロフスクの工業施設を直撃し3人が死亡。中部ドニプロでは1人の死亡が確認された。

ロシア国防省はこの日の攻撃について、ロシア軍がウクライナの防衛産業施設や航空基地などを攻撃したと発表した。

北大西洋条約機構(NATO)が9─11日に米ワシントンで開く首脳会議にはゼレンスキー大統領も出席するとみられている。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 世界も「老害」戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月25日号(11月18日発売)は「世界も『老害』戦争」特集。アメリカやヨーロッパでも若者が高齢者の「犠牲」に

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米クラウドフレアで一時障害、XやチャットGPTなど

ワールド

エプスタイン文書公開法案、米上下院で可決 トランプ

ビジネス

トヨタ、米5工場に1400億円投資 HV生産強化

ビジネス

ホーム・デポ、通期利益見通し引き下げ 景気不透明で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中