最新記事
難病

「ママ...バイバイ」 難病サンフィリッポ症候群の4歳少女...「子供の認知症」の実態を捉えた動画を公開した親の思い

Mom's Agony for Daughter Stuck as a 'Forever Toddler' After Rare Diagnosis

2024年3月9日(土)19時19分
ルーシー・ノタラントニーオ(ライフスタイル担当)

オリビアは、2歳になるまではごく普通の子どもだった。例外は、病気にかかりやすいことと、異常なまでに軟便だったことだ。ともに薬剤師であるオリビアの両親エリンとタイラーは当初、消化器系に問題があるのかもしれないと考えていた。しかし、家族ぐるみの付き合いがある小児神経科医の友人からある日、オリビアは特異な顔つきをしていると指摘を受けた。

「その友人から、オリビアはサンフィリッポ症候群だと思う、と言われた。聞いたことのない病名だった」とエリンは振り返る。「そう指摘されたその週末にすぐ、あらゆるタイプのライソゾーム病について詳しく調べてみた。その一種であるサンフィリッポ症候群についての情報を見つけたときは、オリビアがこの病気でないことを祈った。実を言うと、サンフィリッポ症候群だとは思わなかった。そのころはまだ、関連する問題行動が見られず、おもに医学的な問題だけだったからだ」

サンフィリッポ症候群を患う子どもたちのために治療法を開発する非営利組織キュア・サンフィリッポ財団の最高科学責任者(CSO)カーラ・オニールによると、サンフィリッポ症候群は重症度に幅があるが、いずれ死に至る遺伝子疾患だ。オニールが本誌に対して以前語ったところによると、発生率は7万人の新生児に1人で、子どもの脳だけでなく体をも蝕む。

米国内の患者数は20万人未満の難病

米国内の患者数は20万人未満で、難病に指定されている。患者数20万人未満という難病の定義は、1983年に制定されたオーファンドラッグ法で定められた。

全米希少疾患患者協議会(NORD)によると、ライソゾーム病は、酵素の欠損によって、分解されるはずの有害物質が細胞内に蓄積してしまう、遺伝性の代謝性疾患の総称だ。欠損している酵素によってさまざまな病気が引き起こされる。その種類はおよそ50種類あり、骨格から脳、皮膚、心臓、神経系まで、体内さまざまな部分に影響を及ぼす。

血液検査の結果、2022年3月28日、オリビアがサンフィリッポ症候群であることが明らかになった。

エリンは本誌にこう語る。「家族ぐるみの友人のおかげで、遺伝子検査を急いで予約し、遺伝子検査クリニックに適切なテストを依頼することができた。オリビアの顔つきと病歴から、いずれはそう診断が下されたとは思うが、検査は役に立った」

ボストン小児病院の公式サイトでは、「サンフィリッポ症候群は、常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)という形式で遺伝する。これは、この症候群の子どもは、親のそれぞれから、酵素生成を担う遺伝子の欠陥コピーをひとつずつ受け継いでいるという意味だ」と説明されている。オリビアの両親は、自分たちの遺伝子に問題があることについてはまったく気がついていなかった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 10
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中