東電、福島第1原発処理水の海洋放出を開始 完了まで約30年かかる見通し
東京電力は24日、福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出を開始した。写真は福島第1原子力発電所の作業員たち。South China Morning Post / YouTube
東京電力は24日、福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出を開始した。廃炉を進める上で課題となっていた処理水タンクを減らし、廃炉作業を進める。処理水放出に伴う風評被害対策も含め、福島の復興を急ぐ。これに対し中国は同日、海洋放出を非難し、日本の水産物の輸入を全面停止すると発表した。
東電は、最初に放出する処理水を海水で希釈、トリチウム濃度が基準値の1500ベクレル/リットルを下回っていることを確認し、放出を開始した。
2023年度中は、4回に分けて約3万1200トン放出する。1回目は17日間で7800トンを放出する。放出完了までは30年程度かかる見通し。
現在の技術ではとり切れないトリチウムが残った処理水について、東電は敷地内のタンクに貯蔵しているが、24年2―6月ごろに満杯になる見込み。原発敷地内のタンクは廃炉作業を進める上で障害になるため、21年4月に政府は海への放出を決定した。
政府は福島第1原発の処理水放出時期について、今年の春から夏ごろを見込むとしていた。国際原子力機関(IAEA)が7月、処理水放出について国際的な安全基準と合致しているとの報告書を発表。岸田文雄首相は今月初め、漁業関係者との対話で「信頼関係は少しずつ深まってきている」との認識を示した。
原発処理水に関しては、2015年に経産省と東京電力が福島県漁連に対し、関係者の理解なしにはいかなる処分も行わないと伝えていた。全国漁業協同組合連合会(全漁連)の坂本雅信会長は22日、「漁業者・国民の理解を得られない海洋放出に反対であることはいささかも変わらない」とする声明を発表した。
海洋放出を受け中国外務省は声明で「国境を超えた影響を伴う原子力の安全性に関する重大な問題であり、日本だけの問題ではない」と非難。同国税関は、日本の水産物の輸入を同日から全面停止すると発表した。
香港政府も22日、輸入規制を24日から発動するとし、海洋放出を実施した場合、10都県からの水産物の輸入を禁止すると表明している。
東電は午後3時ごろに、放出地点の近場の10拠点で海水を採取し、調査する。環境省も25日朝、周辺海域で海水を採取し、放射性物質濃度の分析を行う。