最新記事
日本社会

コロナ禍で大きく変わった「お金の使い方」

2023年3月29日(水)11時10分
舞田敏彦(教育社会学者)
家計

ライフスタイルの変化にコロナ禍が拍車をかけた mapo/iStock.

<食費支出が増えてエンゲル係数が上がる一方、洋服への支出は急減している>

コロナ禍となって久しいが、それが人々の生活にどういう影響を及ぼしたかを可視化するデータがたまってきた。変化は様々な面で出ているが、お金の使い方も変わってきている。

まずは、使うお金の額だ。総務省の『家計調査』によると、2人以上世帯の消費支出額(年間平均)は、2019年が352万円、2020年が334万円、2021年が335万円、2022年が349万円と推移している。コロナ禍の最初の1年間でガクンと減り、その後持ち直している。しかし観察のスパンを広げると、今世紀初頭の2000年では381万円。収入の減少もあってか、長いスパンでみると消費に使うお金は減ってきている。

中学の社会科の教科書に書いてあることだが、生活が苦しくなると必須度の高い品目への支出は増え、そうでない品目(奢侈品)への支出は減る。前者の代表格は食費で、後者としては例えば洋服などが該当する。

トータルの消費支出額、食費、および洋服の支出額の変化をグラフにすると<図1>のようになる。2人以上世帯の年額平均で、2000年の数値を100とした指数の推移だ。

data230329-chart01.png

新自由主義政策もあってか、国民の生活は苦しくなり、消費支出額は減少傾向にある。2019年から2020年の減り幅が大きく、コロナ禍の影響も見て取れる。具体的な額は上述の通りだ。

食費支出は増えていて、消費支出全体に占める割合(エンゲル係数)も上がってきている。消費が必須品に偏るようになっている、すなわち生活が困窮していることがこの点からも分かる。

あと1つの洋服への支出額は、消費支出全体より速いスピードで減っており、コロナ禍の影響もよりハッキリと出ている。2000年では8万円だったが、2019年は5万5千円、2020円は4万4千円という具合だ。

洋服は、外界の温度変化(暑さ、寒さ)に適応するためのものだが、お洒落や見栄のツールとしての機能もあり、時代と共にこちらが強くなってきている。収入が減り、かつコロナ禍で人と会わなくなっているとなると、洋服への支出が減るのは当然だ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国万科の社債急落、政府が債務再編検討を指示と報道

ワールド

ウクライナ和平近いとの判断は時期尚早=ロシア大統領

ワールド

香港北部の高層複合アパートで火災、4人死亡 建物内

ビジネス

ドル建て業務展開のユーロ圏銀行、バッファー積み増し
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中