最新記事

ウクライナ戦争

「レオパルト2」が届く前に大規模攻勢を計画か──ロシア

Russia Planning Rapid Offensive Before Leopard Tanks Reach Battlefield—ISW

2023年2月8日(水)16時10分
エリー・クック

ウクライナに供与するドイツ陸軍の主力戦車「レオパルト2」に試乗するボリス・ピトリウス独国防相(2月1日) Benjamin Westhoff-REUTERS

<2月24日のウクライナ侵攻1周年に向けて予想されていたロシアの大攻勢が、西側の戦車供与によって前倒しになる可能性も>

ロシアが、早ければ今後1週間のうちに、ウクライナ軍に対する新たな攻撃を仕掛けるべく準備を進めていることが、最新の軍事分析で明らかになった。西側の主力戦車(MBT)がウクライナに到着する前に攻撃を行おうと急いでいるもようだ。

複数のウクライナ政府高官が、ロシアが「2月の中旬から下旬にかけて、ウクライナ東部で大規模で決定的な攻撃」を開始しようと準備を進めていると警戒を強めていると、アメリカのシンクタンク戦争研究所(ISW)が2月6日に明らかにした。

2月3日には、ウクライナのオレクシイ・レズニコフ国防相がメディア向けの会見で、今後数週間のうちに新たな大攻勢が予想されると発言した。その理由として同国防相は、この攻勢が持つ「象徴的な意味」を挙げた。

現地メディア「ウクラインスカ・プラウダ」によると、同国防相は、ロシア軍からの新たな攻勢は2月24日よりも前に始まる可能性が高いと述べたという。24日は、本格的なウクライナ侵攻が始まってから1年となる節目の日だ。

2月15日以降いつでも

ウクライナ東部、ルハンスク州のセルヒィ・ハイダイ知事は2月6日、テレグラムへの投稿で、「敵軍の攻勢は、2月15日以降のいつでも起きうる可能性がある」と述べた。さらに同知事は、同日のこの投稿のあと、ルハンスク州で攻撃が増えていると指摘し、「これは本格的な攻勢ではなく、むしろその準備だ」との見解を示した。

フィナンシャル・タイムズ紙に匿名で語ったウクライナ側の顧問も、同様の時期に言及した。さらに、ウクライナ南部作戦管区の報道官を務めるナタリヤ・フメニュクは、ロシア政府がウクライナ南部よりも東部に作戦を集中させる可能性が高いと発言した。

ISWはレポートで、ロシア軍が大規模な攻勢をかけられる時期は限られており、それを過ぎると実行が難しくなると指摘した。情報源は、ロシアのある軍事ブロガー(民間軍事会社ワグネルとも関連がある人物)だ。

別の軍事ブロガーも、ロシア軍の司令官は「徹底攻撃を開始しようと事を急いでいる」と指摘していると、ISWは付け加えている。

ドイツの主力戦車「レオパルト2」を含む、西側からの新たな軍事援助の到着や、4月前後からの「地面がぬかるむ春季」より先に作戦を仕掛けたいという意図があるとみられる。「2022年の春にも、ロシアの機甲部隊による作戦が、(ぬかるんだ地面によって)妨げられた」と、ISWは指摘している。

ドイツのオラフ・ショルツ首相は1月25日、同国政府が「レオパルト2A6」戦車14両を供与すると発表。さらに、同型戦車を保有する他の国がウクライナ政府にこの主力戦車を提供することも認めると述べた。

アメリカのジョー・バイデン大統領も、同国が「M1エイブラムス」31両を供与すると発表した。ただし、これらの戦車が戦場に到着し、ウクライナ軍の兵士が必要な訓練を終えるまでには、今後数カ月かかると予想されている。

2月6日には、カナダからの供与分の第一陣となるレオパルト2がポーランドに到着し、今後ウクライナに輸送される予定だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

原油先物、週間で4カ月半ぶり下落率に トランプ関税

ビジネス

クシュタール、米当局の買収承認得るための道筋をセブ

ビジネス

アングル:全米で広がる反マスク行動 「#テスラたた

ワールド

トルコ中銀が2.5%利下げ、インフレ鈍化で 先行き
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 5
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中