最新記事

ロシア

「プーチンのレッドラインはモスクワ攻撃だ」──ロシア元外務次官

Ex-Russian official predicts an attack on Moscow is "bound to happen"

2023年2月2日(木)15時30分
ジョン・ジャクソン

領土を奪った代償は大きい(2022年9月30日、ウクライナ東部4州の併合を祝うモスクワ) REUTERS

<ウクライナへの戦闘機供与は越えてはならない一線か?と聞かれた元外務次官は、そうではない、レッドラインはモスクワ攻撃だ、と答えた>

ロシアの元政府高官が、最近出演した国営テレビの番組の中で、ウクライナもしくはその同盟国によるモスクワ攻撃は「避けられない」との見通しを示した。

元外務次官で、ロシアの首相および副首相の顧問を務めたアンドレイ・フェデロフは、ロシアの外交政策アナリストであるマクシム・ユシンが司会を務める、国営テレビNTVの討論番組に出演。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が西側諸国にジェット戦闘機の供与を求めていることについて、ほかの有識者らと議論した。

その中であるパネリストがフェデロフに、ウクライナ軍に対する戦闘機の供与は、ウラジーミル・プーチン大統領の「レッドライン(越えてはならない一線)」を越えることになり、彼が戦闘をエスカレートさせる引き金になるだろうかと質問。これに対してフェデロフは、戦闘機の供与はロシア政府の「レッドライン」には含まれないと答えた。

ではロシア政府は何を「レッドライン」と見なすか知っているか、と尋ねられると、フェデロフは「知っている」と答えた。具体的には「モスクワの司令部への攻撃だ」という。

それは「(ロシアに対する)攻撃を試みる」という意味かと問われると、「試みではなく実際の攻撃だ。今後行われることになる攻撃は、レッドラインと見なされることになる」とフェデロフは述べた。

以前もモスクワ攻撃を予想

ウクライナ内務省の顧問であるアントン・ゲラシュチェンコは、一連のやり取りの動画をツイッター上で共有した。

フェデロフがモスクワへの攻撃の可能性について、このような断定的な口調で予想を述べたのは、今回が初めてではない。

昨年10月にウクライナ軍が東部ドネツク州の要衝リマンをロシア軍から奪還したことを受けて、フェデロフや、NTVの同番組に出演しているほかの有識者たちは、ウクライナ軍の強さに驚きを示していた。

ウクライナ侵攻をロシアのテレビがどのように伝えているかを紹介しているYouTubeチャンネル「ロシアン・メディア・モニター」の創設者である、ジャーナリストのジュリア・デービスは、2022年10月1日に、リマンが解放されたことに対するフェドロフの反応を収めた動画を投稿した。

この動画の中でフェドロフは、「急激な変化が起きつつある。ロシアがこれらの地域を占領した、あるいは『併合』したから、ウクライナがこれらの領土を解放するための戦争を始めた」と述べてこう続けた。「特別作戦の類ではない。これは戦争だ」

彼は続けて、ウクライナ軍は今後、ロシア国内に攻撃を行う可能性があると指摘。モスクワが標的になる可能性を問われると、「もちろんある」と答えている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

-日産、11日の取締役会で内田社長の退任案を協議=

ビジネス

デフレ判断指標プラス「明るい兆し」、金融政策日銀に

ビジネス

FRB、夏まで忍耐必要も 米経済に不透明感=アトラ

ワールド

トルコ、ウクライナで平和維持活動なら貢献可能=国防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 5
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中