建設現場に若手が足りない......未来の日本では道路や橋がボロボロのまま放置される
THE FORECAST FOR SHRINKING JAPAN
建設現場でも人手不足が加速中 Toru Hanai-REUTERS
<建設業界では「4週4休以下」が36.3%、実労働時間は全産業に比べて21.2%も長い。「雇用環境が劣悪」というイメージで若手が集まらず、人口減少後の日本では老朽化する道路や橋を直す人がいなくなる?>
※ニューズウィーク日本版2023年2月7日号「日本のヤバい未来 2050」特集では、ベストセラー『未来の年表』の著者・河合雅司氏が数々のデータから5つの業界の大変化を映し出す。今回の記事では人手不足が特に深刻な「建設業界」の未来図を紹介。
建設業も人口減少の影響を大きく受ける。
国土交通省によれば、建物や建築物の生産高である建設投資は1992年度の約84兆円がピークだ。2021年度は58兆4000億円で、ピーク時より30.5%減る見通しだ。
人口減少が進むと需要が現行水準を維持することは考えづらいが、一方で、建設業の場合には政府投資の拡大が見込まれる。社会インフラの多くが高度経済成長期以降に整備されており、老朽化が目立つため、更新が喫緊の課題となっているからだ。
例えば、全国に約72万カ所ある道路橋梁の場合、建設後50年を経過する施設の割合は、2019年3月時点の27%から、2029年3月には52%へと跳ね上がる。トンネルや港湾岸壁、水門といった河川管理施設なども大規模に手を入れなければならない時期を迎えている。
建設業への人口減少の影響は、他業種とは異なり就業者の減少という形で色濃く表れるということである。
国交省の推計によれば建設業就業者はコロナ禍前の2018年度時点で既に前年度の331万人より約2万人少なくなっている。さらに、2024年度からは改正労働基準法の適用に向けて時間外労働の上限規制も考慮しなければならなくなる。建築投資が2017年度と同水準と仮定した場合、例えば製造業を下回る労働時間(5年で5%減少)とするためには新規に16万人増やす必要があるというのだ。推計は外国人労働者について3万人ほど少なくなると試算しており、合計すれば2023年度までに約21万人を確保しなければならない。
これを新規学卒者だけで賄うことは難しい。総務省の人口推計によれば2021年10月1日現在の20歳男性人口は59万9000人だ。女性を含めても116万9000人である。各業種による〝若者争奪戦〟は激化の一途だというのに、建設業だけで20歳男性人口の3分の1を確保するというのは、さすがに無理がある。
これに対して国交省は対案を示している。建設現場の生産性を年間1%向上させることで16万人分の人手を確保したのと同じ効果が得られると試算し、新規学卒者を1万5000人採用し、外国人労働者を約3万5000人受け入れれば対応できるというのである。
だが、国交省の皮算用どおりにいくとは限らない。国交省の別の資料によれば、建設業における2021年の年間実労働時間は全産業の1632時間と比べて346時間、率にすると21.2%も長い。休日状況も建設業全体で見ると36.3%が「4週4休以下」となっており、「4週8休」の週休2日となっている人は19.5%にすぎない。技能労働者(建設工事の直接的な作業を行う人)の賃金も低い。2019年で比較すると、全産業の男性労働者が560万9700円なのに対し、建設業の男性技能労働者は462万3900円だ。