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怠けているように見える生活保護受給者は「虐待サバイバー」かもしれない

2023年1月27日(金)16時35分
印南敦史(作家、書評家)
児童虐待

写真はイメージです AHMET YARALI-iStock.

<生活保護業務に携わるなかで気づいた、被虐待児(元・被虐待児)たちの存在。18歳の若さで生活保護を受ける青年はこう言った。「どう生きればいいか、わからない」>

生活保護を受けるのはどんな人かと問われたら、なんらかの経済的理由を抱えた人を思い浮かべる人が多いだろう。

高齢で身寄りもなく、年金だけを頼りに生きている人とか、障害があるため社会的な扶養を受けなければ生活できない人とか、あるいは急な失業で収入が途絶えてしまった人とか。

もちろん、それは間違いではない。しかし『ルポ 虐待サバイバー』(植原亮太・著、集英社新書)によれば、生活保護を拠りどころにしているのは、必ずしもそういう人ばかりではない。

ちなみに著者は、精神科病院でうつ病や依存症の治療などに携わったのち、福祉事務所の精神保健福祉士・カウンセラーとして働き始めたという人物。生活保護業務を行う部署で働くようになった結果、多くの児童虐待から生き延びてきた人たちの存在に気づかされたという。

被虐待児の多くは幼少時代に児童相談所や子ども家庭支援センターなどの介入によって保護されるか、助け出されてきたという経緯を持つ。

だが18歳を迎え、児童福祉法が定義する"児童"から外れると、要保護の対象からも外れることになる。以後は"大人"とみなされ、普通の人たちと同じように自己責任で生きていくことを余儀なくされるわけだ。

ここまでなら、すでに知られている話でもあろう。しかし意外なことに、そんな彼ら「被虐待児(元・被虐待児)」たちが流れ着く場所のひとつが生活保護だというのである。しかも彼らには共通点があるようだ。


それは、どんな困難に陥ったときも、人に頼らず、頼れず、孤立しながら生きているということである。(27ページより)

著者はそのことを、当事者たちの話を積極的に聞くようになってから実感するようになる。「こんなにも困窮しているのに、なぜひとりで耐え忍んでいるのか」という疑問を抱えながら。

もちろんそう感じるのは、一読者にすぎない私も同じだった。だが本書で紹介されている事例を確認するにつけ、少しずつ事情が把握できるようになっていった。

親から生き方を教わった経験がない

例えば印象的だったのは、18歳という若さで生活保護を受けることになったという男性(27歳)のケースだ。彼は母親からの虐待がきっかけで小学5年生のときに児童養護施設に入所したが、その後、母親が会いに来たことは一度もなかったという。

もともと人間関係が苦手だった彼は、以後、小中高を通して不登校になった。施設退所後の生活を見据え、働いて生計を立てていく試みをいくつかしたものの、奏功せず時間だけが過ぎていった。

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