最新記事

気象

「火星より寒い」? 氷点下93.2℃の衝撃──世界一寒い場所はここ

Coldest Known Place on Earth Revealed by NASA

2022年12月27日(火)19時00分
ジェス・トムソン
雪景色

(写真はイメージです) magcs-iStock

<世界一寒い場所はどこか。NASAによると、そこは氷点下93.2℃になることもあるという>

今朝、犬の散歩や仕事に行く時に「凍えるほど寒かった」と思った人も、いま暮らしているのが南極東部の高原地帯ではないだけで十分に恵まれているはずだ。NASAによればここは地球上で最も寒い場所で、氷点下93.2℃を記録することもある。まさに「在宅勤務必至」の天候だと言えるだろう。

NASAのゴダード宇宙飛行センターは12月16日、NASAの地球観測衛星により、地球上で最も気温が低い場所は南極東部の高原地帯だと判明しているとフェイスブックに投稿。南極高原の気温が氷点下93.2℃を記録したことを示す衛星写真を共有し、「晴れた冬の夜には、気温が氷点下93.2℃にまで下がることもある!」とつづった。

氷点下93.2℃という気温は、地球よりもずっと太陽から遠い火星よりも、時と場合によっては低い。1年を通じた火星の平均気温は氷点下63℃前後。夏には赤道地帯が20℃前後に達するが、冬には両極地点が氷点下140℃にまで低下する。

極度の寒さは人間にとって危険だ。米国立気象局のデータによれば、氷点下70℃の環境で2分間過ごすと凍傷になるという。

南極以外にも極寒の気候に見舞われる場所が

寒波は熱波よりも命取りになる可能性がある。2015年に医学雑誌ランセットに掲載されたある研究論文によれば、13カ国384地点の7400万人を超える人々の死を分析したところ、寒さが原因で死亡した人は、暑さが原因で死亡した人の20倍にのぼったという。

NASAは2013年、2010年に南極大陸の「ドームふじ」と「ドームアーガス」と呼ばれる地点の中間にある尾根で、氷点下93.2℃が記録されていたと発表。ただし、地上設置型の温度計ではなく、遠隔探査衛星を使って記録された気温のため、公式な世界記録としては認められていない。

地上設置型の温度計で計測した史上最低気温は、1983年に同じく南極高原(当時ソビエト連邦が運営していたボストーク基地)で記録された、氷点下89.2℃だ。これ以前の最低気温も、同じボストーク基地で1968年に記録された氷点下88.2℃だった。

南極以外の地域も、極度の寒さに見舞われることがある。アメリカで記録された史上最低気温は、1971年にアラスカ州のプロスペクトクリークで記録された氷点下62.1℃。アメリカ本土では、1954年にモンタナ州のロジャーズ峠で記録された氷点下56.6℃が史上最低気温だ。

アメリカは北極圏からの寒気が南方に流れてきた影響で大寒波に見舞われており、これまでの最低記録の一部が塗り替えられる可能性もある。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

IMF、日本の財政措置を評価 財政赤字への影響は限

ワールド

プーチン氏が元スパイ暗殺作戦承認、英の調査委が結論

ワールド

プーチン氏、インドを国賓訪問 モディ氏と貿易やエネ

ビジネス

米製造業新規受注、9月は前月比0.2%増 関税影響
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 6
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 7
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 8
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 9
    【トランプ和平案】プーチンに「免罪符」、ウクライ…
  • 10
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 10
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中