最新記事

宇宙

ほぼ光速のジェット噴流が中性子星の衝突で形成されていた...ハッブル望遠鏡が捉える

2022年11月1日(火)18時48分
青葉やまと

中性子星は崩壊してブラックホールとなり、強力な引力をもって周囲の物質を引き寄せ始める。集まった物質は次第に降着円盤と呼ばれる急速に回転する盤面を形成した。その一部は天体の極付近から外側へ向かう潮流を形成し、ジェットとして噴出された。

強力な磁場によってジェットの方向は制限され、2つの中性子星の境界面上にある軸に沿う形で、細いビーム状に放たれたと想定されている。ジェットは周囲の星間物質を巻き込みながら宇宙空間を突き進み、その一部が地球から観測された形だ。

見かけ上の速度は光の7倍に

ハッブルの観測によると、ジェットの見かけ上の速度は光速の7倍にも達している。しかし相対性理論により、宇宙の膨張を加味する場合を除き、光速を超える速度で移動する物質は存在しないことが証明されている。

ジェットが光速の数倍で移動しているかのような観測結果が生まれたのは、一般に超光速運動と呼ばれるいわば錯覚によるものだ。

その原理についてNASAは、「ジェットは光に近い速さで地球に向かって進んで来るため、そこから放たれる光は後に放たれるものほど、短い距離を進むだけでよいことになります。つまり、ジェットは自身が放つ光よりも後から追いかけてくるのです」と説明している。

分析結果を詳述した論文が、10月12日付でネイチャー誌に掲載されている。論文の筆頭著者であるカリフォルニア工科大学のクナル・P・モーリー教授はNASAに対し、「ハッブルがこれほど高精度の測定をもたらし、世界各地に存在する強力なVLBI望遠鏡の力を証明したことに驚いています」と語っている。

>>■■【動画】ほぼ光速で宇宙を駆けるジェット噴流...ハッブル望遠鏡が捉える

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

プーチン氏、和平に向けた譲歩否定 「ボールは欧州と

ビジネス

FRB、追加利下げ「緊急性なし」 これまでの緩和で

ワールド

ガザ飢きんは解消も、支援停止なら来春に再び危機=国

ワールド

ロシア中銀が0.5%利下げ、政策金利16% プーチ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 5
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 8
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 9
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 10
    中国、ネット上の「敗北主義」を排除へ ――全国キャン…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中