英ロンドンでポリオウイルスが下水から検出 ひそかに感染が広がっている?
ロンドンの下水処理場からポリオウイルスが検出された...... Sky news-YouTube
<6月22日、ロンドンの下水処理場からポリオウイルスが検出された。ロンドン北部や東部でポリオウイルスへの感染が広がっている可能性があるとして調査が進められている>
英国健康安全保障庁(UKHSA)は2022年6月22日、「首都ロンドンのベックトン下水処理場から採取した下水試料で急性灰白髄炎(ポリオ)の病原体であるポリオウイルスが検出された」と発表した。
英国では、これまでの定期サーベイランスで、毎年1~3個のワクチン様ポリオウイルスが下水試料から検出されているが、いずれも1回限りであり、再度検出されることはなかった。英国外で経口生ポリオワクチン(OPV)を接種した人が英国に入国した際、ワクチン様ポリオウイルスが糞便中に排泄されたものとみられている。
ロンドンでポリオウイルスへの感染が広がっている可能性
一方、2022年2月から5月にかけて採取された下水試料では、遺伝的な関連のあるウイルスが複数見つかった。このことから、ロンドン北部や東部で近しい関係にある人々の間でポリオウイルスへの感染が広がり、これらの人々の糞便中にウイルスが排泄されている可能性があるとして、調査がすすめられている。
このウイルスは「2型ワクチン由来ポリオウイルス(VDPV2)」に分類され、ワクチンを完全接種していない人ではまれに麻痺などの重症になることがある。世界保健機関(WHO)によると、2020年にはアフリカ地域を中心に27カ国で計959件の症例が報告された。今回、ロンドンで検出されたこのウイルスは下水試料のみであり、現時点でポリオ麻痺症例は報告されていない。
近年、子どものワクチン接種率が低下
英国では、1984年以降、野生株ポリオウイルスに感染した症例が確認されておらず、2003年にはポリオの根絶を宣言した。しかし近年、子どものワクチン接種率が低下。ロンドンではポリオの予防を含む6種混合ワクチンの接種率が86.6%にとどまっている。
英国健康安全保障庁の疫学者ヴァネッサ・サリバ博士は「ワクチン由来ポリオウイルスはまれであり、総じて一般市民へのリスクは極めて低い」とする一方で、「特にワクチン接種率が低い地域では、感染が広がるおそれもある」と指摘している。