最新記事

核マップ

【核爆弾シミュレーター】それが近くに落ちたら被害はどこまで及ぶか

Nuclear Bomb Blast Map Shows What Would Happen if One Detonated Near You

2022年5月17日(火)16時33分
アリストス・ジョージャウ

ロシア主導の軍事同盟「CSTO」の会議でNATO拡大への「報復措置」を強調したプーチン(3月15日)REUTERS/Mikhail Metzel/RIA Novosti/Kremlin

<ロシアのウクライナ侵攻以降、それまでは考えられなかったような核攻撃が現実にありうる世界にわれわれは暮らしている。地球のどこにいてもその重みが実感できるツールを専門家が開発した>

ここ数週間、核戦争の脅威に関する議論が熱を帯び始めた。スウェーデンとフィンランドがNATOへの加盟姿勢を鮮明にしたことに、ロシアが反発強めているためだ。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が今後、核兵器の使用に踏み切るかどうかをめぐっては、識者の意見も割れている。大統領の発言を「口先の脅し」だと一蹴する者がいる一方で、プーチンが窮地に追い詰められればリスクは現実のものになる、とする声もある。

実際に核爆弾が爆発した場合、何が起きるのだろうか? 爆発直後の衝撃はどれほどで、放射線が放出されるエリアはどこまで広がるのだろう?

ニュージャージー州ホーボーケンにあるスティーブンス工科大学准教授で、核兵器の歴史研究が専門のアレックス・ウェラーシュタインは、こうした疑問に地図上で答える核爆弾シミュレーター「ニュークマップ(核マップ)」を作成した。

nucleartopsmall.jpeg
NUKEMAP BY ALEX WELLERSTEIN HTTPS://NUCLEARSECRECY.COM/NUKEMAP/ / MAP DATA © OPENSTREETMAP CONTRIBUTORS, CC-BY-SA, IMAGERY © MAPBOX
ニューヨークの上空で史上最強の核爆弾「ツァーリ・ボンバ」が爆発した場合の被害シミュレーション(スクリーンショット)

このニュークマップは、世界の任意の地点で核爆発が起きた場合の影響を示してくれる。核兵器の威力や、地表(あるいはその近く)と上空のどちらで爆発したか、などの条件別に、爆風の及ぶ範囲を表示する。

予想される死者および負傷者の数、放射性降下物(フォールアウト、死の灰とも)が広がる範囲の大まかな推計、キノコ雲のサイズなどについても推定値が示される。作成者のウェラーシュタインは、シミュレーターに添えた説明文の中で、核兵器の破壊的被害を地図上に簡潔に描くことで、爆発の規模を理解する助けにするのが目的だと記している。

「私たちは、核兵器の話題が新聞の一面に頻繁に登場する世界に生きている。だが、実際に核爆弾が爆発した場合に何が起きるのかについては、非常に不正確なイメージしか持っていない人が大半だ」と、ウェラーシュタインは記す。

「地球上のあらゆるものが一瞬にして破壊されると思う人もいれば、従来型の爆弾とそれほど変わらないと考える人もいる。現実に起きることは、この両者の考えの中間のどこかにある。核兵器は甚大な破壊をもたらし、多くの人命を失わせる可能性があるが、その影響は、人間に把握不可能なほどではない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

新型ミサイルのウクライナ攻撃、西側への警告とロシア

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中