中国、南シナ海で新たに3環礁を軍事基地化 米比は合同軍事演習を過去最大規模で実施へ
フィリピン軍と米軍による合同軍事演習「バリカタン」が今年は顔最大規模で実施される US Military Defense / YouTube
<ロシアのウクライナ侵攻は中国による海洋進出に悩むフィリピンにも衝撃を与えた──>
フィリピン軍と米軍による合同軍事演習「バリカタン」が3月28日から4月8日までフィリピン北部ルソン島を中心に行われることを22日にフィリピンが発表した。
「バリカタン」は2020年には折からのコロナ感染拡大や米国との関係がこじれた影響などを受けて中止。2021年は規模を縮小して実施された。
2020年にはドゥテルテ大統領がフィリピン国内での米軍の活動を認める「訪問軍地位協定(VFA)」の破棄を表明。米国との関係が一時悪化した時期もあった。
しかし今回の「バリカタン」はこれまでを上回る最大規模で実施される予定で、フィリピン軍から3800人、米軍からは5100人の合計8900人が参加。南シナ海での中国の一方的な領有権主張、海洋権益拡大を受けて、水陸両用作戦や航空作戦、人道支援、対テロ作戦などを実施する予定で、過去最大規模の演習になるという。ちなみに「バリカタン」はタガログ語で「肩を並べる」という意味だ。
ウクライナ侵攻のロシアを意識
今回のバリカタン合同軍事演習は、2月24日のロシアによるウクライナ軍事侵攻と無関係ではなく、4月10日には駐米フィリピン大使がドゥテルテ大統領の意向として「ウクライナ情勢がアジアに波及した際は米軍がフィリピン国内の軍事施設を自由に使用できるようにする用意がある」として、米軍の有事の際の増派に対応する姿勢を明らかにしている。
米軍とフィリピンは「訪問軍地位協定(VFA)」をめぐって2020年にドゥテルテ大統領が破棄を米国に通告し、関係がぎくしゃくした。これに対し対中国でフィリピンは重要な同盟国であることから2021年7月にオースティン米国防長官がフィリピンを訪問してVFAの継続が確定した経緯がある。
今回の「バリカタン」はこうした背景からロシアによるウクライナ軍事侵攻、そして南シナ海での中国の活動を意識したものとなるとみられており、3月22日には米軍の輸送機オスプレイがスービック基地に先着している。
米軍はかつて基地があったスービックやクラーク基地を拠点にルソン北部の演習場所に展開するものとみられている。
中国による南シナ海の軍事拠点化
米軍とフィリピン軍がこの時期に過去最大級の合同軍事演習を実施する背景の一つとして、中国による南シナ海での環礁の軍事化が急速に進んでいることもあるとの見方が有力だ。
米軍の偵察衛星などの情報から、米軍は少なくとも南シナ海の3つの環礁が最近中国による軍事拠点化が確認されたという。