地下20キロまで掘削、深部地熱を活用する技術の開発がすすめられている
摂氏約500度の地下20キロまで超深度掘削できる新しい掘削装置の開発をすすめている...... Quaise
<地熱発電は2015年時点で世界全体の発電電力量のわずか0.3%。しかし、深部地熱を活用しようとするベンチャーに資金が集まる......>
地熱は再生可能エネルギーのひとつだが、太陽光や風力などに比べて活用がすすんでいない。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、地熱発電は2015年時点で世界全体の発電電力量のわずか0.3%だ。
地熱資源が豊富な日本でも国内の電力需要の約0.2%を賄うにとどまっている。
地表近くに地熱発電に適した高温の岩体がある場所は限られているが、地下200キロには深部地熱が潤沢に広がっており、地球のどこからでも地熱を得られる。地下深く掘削するうえで課題となるのが、摂氏180度を超える高温環境で岩体を砕かなければならないという点だ。
摂氏約500度の地下20キロまで掘削できる新しい装置
米マサチューセッツ工科大学(MIT)プラズマ科学・核融合センター(PSFC)から2018年に分離独立したスタートアップ企業クエイズ・エナジーは、既存の掘削技術と核融合研究を組み合わせ、摂氏約500度の地下20キロまで超深度掘削できる新しい掘削装置の開発をすすめている。
この掘削装置は、磁場に沿って高速で回転する電子の運動をエネルギー源としてミリ波帯電磁波を発振させる真空管「ジャイロトロン」を用いているのが特徴だ。「ジャイロトロン」はこれまで主に核融合でのプラズマ加熱に利用されてきた。
クエイズ・エナジーでは、まず、従来の回転掘削で地下の岩体を掘りすすめ、さらに「ジャイロトロン」を使ってミリ波帯電磁波を発生させ、これによって岩を溶かして気化させながら地下20キロまで到達できると考えている。
投資を呼び込む、深部地熱
深部地熱へのアクセスを実現し、再生可能エネルギーへの転換を促すクエイズ・エナジーの技術は、多くの投資を呼び込んでいる。2020年6月に600万ドル(約7億800万ドル)の資金調達に成功した後、2021年8月に1200万ドル(約14億1600万ドル)、2022年2月には4000万ドル(約47億2000万円)を相次いで調達した。
クエイズ・エナジーでは2024年までにこの掘削装置を完成させ、2026年に100メガワットの地熱発電システムを構築する計画だ。2028年以降、既存の石炭火力発電所の地熱発電所への転換をすすめていく。