米共和党内に顕在化しはじめた反トランプ派の動き、上院トップのマコネルが支援
Trump vs. McConnell: Top Republicans Fight Over Future of GOP
ホワイトハウスでトランプ大統領(当時)の話を聞く共和党のマコネル上院院内総務(2018年、Leah Millis-REUTERS)
<秋の中間選挙を前にマコネル上院院内総務は反トランプ派の勢力増を目指して東奔西走>
ドナルド・トランプ前米大統領と共和党上院トップのミッチ・マコネル院内総務の対立は、秋の中間選挙を前に一触即発の状態が続いている。
トランプはこの1年、繰り返しマコネルを攻撃してきたが、この数カ月は批判をさらに強めている。昨年1月6日に起きた米連邦議会襲撃事件をほう助したとしてトランプを非難するマコネルに対し「老いぼれカラス」とののしる始末だ。
13日のニューヨーク・タイムズによれば、中間選挙を前にマコネルは、トランプへの支持に消極的な共和党候補の応援に忙しい。マコネルは、トランプが支援する多くの候補者を「まぬけども」と切って捨て、反トランプの保守派の立候補者を後押ししていると伝えられている。
ニューヨーク・タイムズによれば、共和党のリサ・マーカウスキー上院議員(アラスカ州選出)は、「(マコネルは)アラスカのために働いていた人のためなら力を貸すという姿勢を明確に示した」と語った。マーカウスキーはトランプの2度目の弾劾裁判で有罪を支持。中間選挙に向けた共和党の予備選挙ではトランプが推す候補と対決することになっている。
中間選挙では共和党が下院の過半数を獲得するというのが政治アナリストのもっぱらの見方で、上院でもそうなる可能性が高いと考えられている。つまりマコネルとトランプの対立は、共和党の未来だけでなくアメリカという国全体に大きな影響を及ぼしかねない。
トランプと共和党内のトランプ支持派がいわゆる「大きな嘘」、つまり2020年大統領選挙におけるジョー・バイデンの勝利がトランプから「盗まれた」ものだという陰謀論を唱えているのに対し、マコネルらはそれを認めていない。
「多くの共和党員は、たとえトランプの意見にすべて反対ではなかったとしても、トランプのことを党内の結束を揺るがす存在、民主制度を揺るがしかねない存在として見ている。特に、2020年選挙が盗まれたとする虚偽にトランプが固執している点は、他の問題意識を持って立候補しようとする共和党員にとっては困った問題だ」と、ジョージタウン大学のハンス・ノエル准教授は13日、本誌に語った。
下院院内総務はトランプ派に転身
一方で共和党のケビン・マッカーシー下院院内総務はマコネルとは違う道を選び、トランプと共同歩調を取っている。「ケビンはまさにトランプ応援団長だ」と、共和党のケビン・クレーマー上院議員は先週、政治ニュース専門紙ザ・ヒルに語った。一方でマコネルは「切れ者で狡猾で抜け目ない」
実は連邦議会襲撃事件の直後はマッカーシーもトランプを非難していた。だがその後、マッカーシーは関係修復のためフロリダ州にあるトランプの豪邸マールアラーゴを訪問。マッカーシーは中間選挙後に下院議長になることをもくろんでおり、そのためにはトランプ派議員の支持もトランプに批判的な議員の支持も集めなければならない。
「もし予想通り共和党が上下両院で過半数を獲得すれば、マコネルの立場はさらに強まるかも知れない。だがトランプ派の下院議員たちの影響力も強まるかも知れない」と、ノエルは本誌に語った。「もちろん、下院で共和党が大勝した場合、(政治的に)穏健な選挙区でも勝利を収めているだろうから、バランサーとなる非トランプ派議員が増える可能性もある。だが戦いの場は下院に移るだろうと私は思う」