チャールズ皇太子【特別寄稿】2人の息子の行動を誇りに思う...気候変動に戦時の危機感を
THE ROYAL PLAN
Jack Hill/Pool via REUTERS
<孫の世代にクリーンな地球を残すため、私たちは行動を起こさなければならない。環境問題に精力的に取り組む英チャールズ皇太子の提言>
キューバ危機により世界が核戦争の瀬戸際に立たされてから1年もたたない1963年6月。ジョン・F・ケネディ米大統領は、ワシントンにあるアメリカン大学の卒業式で演説を行った。
恒久平和の実現はなおも遠い夢だったが、ケネディは演説の中で戦争は避けられないとする考えを「危険で敗北主義的な思い込み」と退け、「人類は制御できない力に支配されており」「滅びる運命にある」という見方に反論した。
その上で世界平和への協力を呼び掛け、次のように力強く宣言した。「私たちの問題は人の手でつくられた問題ですから、人の手で解決できます。人は自分が望む限り、どこまでも大きくなることができるのです。人類の運命に関わる問題で、人類の力が及ばないものはありません。人間の理性と精神は、解決できそうにない難題を何度も解決してきました。今回もそうだと信じています」
ケネディの呼び掛けは今の時代にも響くが、問題は変わった。今の私たちは未来の世代によりクリーンで安全で健やかな地球を残すため、気候変動と戦っている。世界は再び瀬戸際に立たされており、勝利を収めるには戦時の危機感を持って、人々を動かさなければならない。
60年前、亡き父(フィリップ殿下)は人類が地球に与えるダメージを憂慮し、世界自然保護基金(WWF)の創設に関わった。そのおよそ10年後、私は初めて公の場で環境問題について語ったが、杞憂と考える人は少なくなかった。そうした見方は徐々に変わってきたが、危機意識は今も不十分だ。
行動を起こした息子たちを誇りに思う
気候変動の脅威を認識し行動を起こした息子たちを、私は父として誇りに思う。長男ウィリアムは地球の回復を促すため、革新的な取り組みや技術に投資を行う環境賞「アースショット賞」を設立した。
次男のヘンリーは気候変動の打撃をとりわけアフリカに絡めて訴え、自身の慈善団体で「ネットゼロ(温室効果ガスの排出量を実質ゼロに抑えること)」を目指すと誓った。
気候変動に人間の活動が関係していることを否定する声は、世界中で減っている。しかし「制御できない力に支配されて」いる私たちに環境破壊を止め、流れを逆転させることはできないと悲観する人は、あまりに多い。
力を制御できることは科学が示している。ただし制御するには、意識的に行動を起こさなければならない。