最新記事

新型コロナウイルス

オミクロンBA.2はBA.1より重症化率が高い可能性(新研究)

BA.2 Variant Could Be More Dangerous, Immune-Resistant Than BA.1—Study

2022年2月18日(金)16時16分
エド・ブラウン

2月17日には都内でもBA.2の市中感染とみられる事例が2件、初めて確認された Yuji Kudo-iStock.

<東京でも市中感染事例が初めて確認されたオミクロン株の亜種「BA.2」は肺炎などの重症化率が高い可能性があることが、日本の研究で示された>

新たな研究報告によれば、新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の亜種である「BA.2」は、公衆衛生にとって、従来型のオミクロン株「BA.1」よりも大きなリスクとなる可能性がある。

「ステルス・オミクロン」とも呼ばれる「BA.2」は、デンマークや南アフリカなど複数の国で「BA.1」に代わって主流になっており、大きな注目を集める研究対象になっている。

研究者たちによれば、「BA.2」は「BA.1」よりも相対的な実効再生産数が大幅に高い。つまり「BA.1」よりも感染拡大のスピードが速い可能性があるということだ。だが重症化率やワクチンへの耐性など、そのほかの重要な特徴については、まだはっきりと分かっていない。

英国保健安全保障庁(HAS)が、新型コロナウイルスワクチンのブースター接種を受けた人々について得た初期データからは、ワクチンが発症予防という点で「BA.1」と同様に「BA.2」にも有効であることが伺える。

だが日本の研究者数十人が2月15日に投稿した研究は、「BA.2」の方が「BA.1」よりも病原性(感染症を引き起こす能力)が高く、過去の免疫への耐性が強い可能性があると述べている。ただし、この研究報告はまだ査読(専門家による検証)前のもので、その質と信頼性については今後評価されることになる。

この研究では、複数のハムスターを「BA.1」に感染させ、ハムスターの体が免疫反応を起こした後にその血液を採取し、それを「BA.1」と「BA.2」に暴露した。その結果、「BA.2」は「BA.1」に比べて抗原性が2.9倍強いことが分かった。

「懸念される変異株」に指定すべき

さらに、「BA.1」への免疫をもたせた複数のマウスの血液を「BA.1」と「BA.2」に暴露させると、「BA.2」は「BA.1」により耐性が6.4倍強かった。

またこれとは別に、複数のハムスターを「BA.2」と「BA.1」に感染させて調べたところ、「BA.2」に感染したグループの方が、「BA.1」に感染したグループよりも、体重減少などの健康障害を示すケースが多かった。またハムスターの肺に存在するウイルスの量についても、「BA.1」よりも「BA.2」に感染したグループの方が多く、肺炎など重症化の可能性が高いことがわかった。

研究者たちは、これらの所見から、「BA.2」にギリシャ文字から取った名前をつけて、「懸念される変異株として認識すべき」だと述べている。

しかしながら、考慮すべき幾つかの問題はある。前述のとおり、今回の研究報告はまだ査読のプロセスを経ていない。つまりその結果はまだ完全に信用することはできないということだ。それに動物や細胞培養モデルが、常にそのまま人間に当てはまる訳でもない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中