最新記事

米ロ対立

米ロ首脳、電話会談でウクライナ情勢協議 バイデンは強力な経済制裁警告

2021年12月8日(水)11時49分
ロシアと米国の国旗

バイデン米大統領は7日、ロシアのプーチン大統領とテレビ電話形式で会談を行い、ロシアのウクライナにおける行動に対し深い懸念を表明した。写真はロシアと米国の国旗。ロシア・フセボロシュスクの工場で2019年3月撮影(2021年 ロイター/Anton Vaganov)

バイデン米大統領は7日、ロシアのプーチン大統領とテレビ電話形式で会談し、ロシアがウクライナに侵攻すれば西側諸国は「強力な経済措置」などで対抗すると警告した。これに対しプーチン氏は、北大西洋条約機構(NATO)が東方に拡大しないよう保証を求めた。

冷戦以降、最悪の関係

両首脳の会談は、二国間関係が冷戦終結後で最悪の状態に陥る中で開かれた。バイデン氏は強力な経済制裁を発動するだけでなく、ロシア産天然ガスをドイツに送るパイプライン「ノルドストリーム2」の稼働を阻止する可能性について警告し、米国と欧州の同盟国はウクライナに対し一段の軍事支援を行うと表明した。

ホワイトハウスの声明によると、バイデン大統領は「軍事エスカレーションには米国と同盟国が強力な経済措置やその他の対応を取ると明言」した。

米国のサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は電話会談後、記者団に対し、2014年のロシアによるクリミア併合を引き合いに出し「米国は14年に実施しなかったことを実施する用意がある」と述べた。

ロシアが軍事侵攻し、バルト海沿岸の同盟国が米国に軍事力配備の強化を求めた場合は「積極的に対応したい」と語った。

ある米当局者は、ロシアの大手銀行や通貨ルーブルを他通貨と交換する政府機能を制裁の対象にする可能性があると述べた。

5カ国首相が電話会談

一方、ロシア大統領府によると、プーチン氏は緊張状態の全ての責任をロシアに押し付けるのは間違っていると指摘。NATOはウクライナ領土の「開発」を試みていると批判した上で「NATOの東方拡大を排除する信頼のおける法的に定められた保証」を求めた。また、攻撃兵器をロシアの近隣国に配備しないという保証も求めた。

ホワイトハウスによると会談は約2時間に及び、両首脳は米ロの「戦略的安定対話」などについても協議。両首脳は今後も連絡を取り合うことで合意し、共に対面形式での会談を実現させたい意向を示した。

米ロ首脳会談を受け、米国と独仏英伊の5カ国首脳は電話会談を行い、ロシアのウクライナに対する「攻撃的な」行動に対し警戒を続けるとの見解で一致。仏大統領府は「5カ国首脳なウクライナの主権を保証し、安定と安全を確保するために強力する決意を改めて確認した」とし、「ロシアがウクライナに対して取る可能性のある攻撃的な行動を引き続き警戒する」とした。

ロシア債券の売買制限を検討

ヌランド米国務次官(政治担当)は米議会で、ロシアがウクライナに軍事侵攻すれば、ノルドストリーム2の稼働が阻止されると想定していると述べた。

事情に詳しい関係者によると、米政府は流通市場でロシア債券の売買を制限する可能性を検討してきた。米国が単独でこのような措置を講じたとしても、ロシア政府にかなりの悪影響が及ぶとみられるとした。

ロシア政府系の直接投資基金(RDIF)が制裁対象に指定される可能性もある。

CNNは、制裁の一環として世界の決済ネットワークである国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアを遮断する措置が講じられる可能性があると報じた。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・再びウクライナ侵攻の構えを見せるプーチン露大統領の一手は「攻め」か「守り」か
・極超音速ミサイルでロシアはアメリカを抜いたのか、それともウクライナ侵攻前のブラフなのか?
・駐米ロシア外交官27人追放される、来年1月に出国へ


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パキスタンがアフガン空爆、子ども9人死亡 タリバン

ワールド

日米首脳が電話会談、日中関係の悪化後初めて 高市氏

ワールド

パレスチナ、過去最悪の経済崩壊 22年分の発展が帳

ワールド

中国の新規石炭火力許可、25年は4年ぶり低水準に 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 6
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中