最新記事

新型コロナ変異株

イギリスに新たな変異株「デルタプラス」出現 従来型より感染力が強い可能性

Delta Plus Sub-variant Could Be More Infectious Than Original Delta

2021年10月21日(木)14時52分
エド・ブラウン
新型コロナウイルス(イメージ)

研究者は新たに出現した変異株「デルタプラス」を注視している Nawaz Alamgir-iStock

<ワクチン接種が進み行動制限が解除されたイギリスでの感染拡大に影響か>

イギリスではこのところ、新型コロナウイルスのデルタ株がさらに変異した「デルタプラス」の感染が拡大している。研究者たちはこの「デルタプラス」について、従来のデルタ株よりも感染力が10%程度強い可能性があると考えている。

既存のワクチンが効きにくいかどうかはまだ分かっていない。既存のデルタ株がアルファ株に代わって優勢になった時のように、急速に広まっている様子もない。

「AY.4.2」と特定された新たな変異株は、「Y145H」と「A222V」として知られる2つの変異を併せ持つデルタ株の亜系統「AY.4」から派生したものとみられる。Y145HもA222Vも、過去に確認されている複数の変異株にみられる変異だが、発生頻度は低い。

米食品医薬品局(FDA)のスコット・ゴットリーブ元長官は、このAY4.2を「デルタプラス」と称した。2021年に入って確認された、K417N変異を持つデルタ株を指すのに使われていたのと同じ呼び名だ。K417Nと今回のAY4.2に互換性があるのかどうかは、明らかになっていない。

いずれにせよ、情報データベースGISAIDに登録されているウイルスの遺伝子配列データを使用している変異株データサイト「Outbreak.Info」によれば、このデルタプラスは7月前半あたりからイギリスで広まり始め、それ以降、新たな感染例の7~8%を占めている。

感染拡大への影響は少ない見通し

イギリスではこれまでに、この新たな変異株の感染例が約1万4247件報告されている。アメリカでの報告例はもっとずっと少なく、これまでにカリフォルニア州、ノースカロライナ州とコロンビア特別区で感染が確認されているが、合わせて3例のみだ。

だが科学者たちは、このAY4.2に注目し始めている。ユニバーシティー・カレッジ・ロンドン(UCL)遺伝子研究所のフランソワ・バロー所長は、週末にツイッターに行った投稿の中で、イギリスにおける最近の感染再拡大を踏まえると、AY4.2の感染力は従来のデルタ株より10%程度高い可能性があるとの見方を示した。

彼はまた「今後もAY4.2を注視していくべきだと感じている」とも述べたが、現段階でのウイルスの特徴からは、必ずしも「懸念される変異株」に発展する見通しが高い訳ではないともつけ加えた。

バローは19日に出した声明の中で、「これまでに確認されている変異株とはまた別の、より感染力の強い株の出現は、あまり良いこととは言えない」と指摘。「現在の状況は、それまで確認されていたどの株よりも感染力が50%以上強かったアルファ株やデルタ株が出現した時の状況とは異なる。今回の変異株は、これまでの株に比べて感染力がわずかに強い程度である可能性がある。以前のアルファ株やデルタ株ほど、感染拡大に影響しないだろう」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、イラン核施設への限定的攻撃をなお検討=

ワールド

米最高裁、ベネズエラ移民の強制送還に一時停止を命令

ビジネス

アングル:保護政策で生産力と競争力低下、ブラジル自

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 4
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 5
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 6
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 7
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 8
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 9
    トランプが「核保有国」北朝鮮に超音速爆撃機B1Bを展…
  • 10
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 10
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中