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「藤井二冠を殺害予告疑いで追送検」──誤解や混乱を減らすための「言葉の実習」とは?

2021年9月21日(火)10時55分
古田徹也(東京大学大学院人文社会系研究科准教授)※アステイオン94より転載

Newsweek Japan


<情報収集が主にインターネットとなっている今、十分なコンテクストなしに文章を解釈することが強いられている。論壇誌「アステイオン」94号「ニュースの見出しと『言葉の実習』」より>

昨年の8月下旬、インターネット上のニュースサイトを眺めていると、「藤井二冠を殺害予告疑いで追送検」という見出しが目に飛び込んできた。ぎょっとして記事の内容を確認したところ、将棋の藤井聡太二冠(当時)が誰かの殺害予告を行ったのではなく、藤井二冠に殺害予告を行った者が追送検された、という内容だった。

そのおよそ10日後には、あるテレビ局のニュースで「列車が人と接触して死亡」という見出しが流れた。列車が「死亡」するわけがないのだから、この見出しが言わんとすることは分かる。だが、うまく頭に入ってこない奇妙な文章であることは確かだ。

さらに、その3日後には、「14人感染、さいたまの中学生など 1人死亡」という見出しを打つ新聞があった。遂に十代の若者からも新型コロナウイルス感染症による死亡者が出たのかと驚き、実際に記事を読んでみると、死亡したのは中学生ではなく、60代の男性だった。

これらの見出しの問題は、言葉遣いが拙いがゆえに誤解や混乱を招いているという点だ。たとえば、冒頭の「藤井二冠を殺害予告疑いで追送検」という見出しは、「を」を「の」に置き換えるだけで、つまり、「藤井二冠の殺害予告疑いで追送検」とするだけで、誤解を避けることができる。また、「列車が人と接触して死亡」という見出しも、「列車」と「人」を入れ替え、「人が列車と接触して死亡」とすれば、文章のおかしさはある程度改善される。(しかし、別の奇妙さが残る。この点については後述する。)

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