最新記事

東京五輪

強権国家ベラルーシの女子陸上選手 強制帰国を拒否、保護を求める

Belarus Sprinter Says She Was Forcibly Removed From Olympics for Criticizing Coaches

2021年8月2日(月)16時26分
ナタリー・コロロッシ
ベラルーシの陸上選手クリスチナ・チマノウスカヤ

羽田で帰国を拒んだベラルーシの陸上選手クリスチナ・チマノウスカヤ OBC News-YouTube

<オリンピック競技への出場を撤回され、帰国を強制されたベラルーシ選手が羽田空港でIOCに保護を求めた。政治亡命を求めているという>

東京五輪に出場中のベラルーシの陸上女子選手クリスチナ・チマノウスカヤ(24)は7月31日、代表チームから外され、帰国のために羽田空港に強制的に連れて行かれたと訴えた。インスタグラムで陸上チームのコーチらを批判したことが原因だという。

インスタグラムに投稿した動画の中で、チマノウスカヤは国際オリンピック委員会(IOC)に、自分の意志に反して帰国させられないように助けてほしいと訴えた。


「私は圧力をかけられた。コーチ陣は私の同意なく、この国の外に無理やり連れだそうとしている。私はIOCに介入を求める」と語るチマノウスカヤの動画は、政治的見解を理由に投獄や不当な扱いをうけたスポーツ選手を支援する人権団体「ベラルーシ・スポーツ連帯基金」チャンネルでも公開された。

ベラルーシでは、アレクサンドル・ルカシェンコ大統領の強権的な体制が続いており、政府に抗議する活動に参加したスポーツ選手が投獄されたり、代表チームから外されたりしている。

チマノウスカヤは、自分のチームから外されたのは、「インスタグラムでコーチの怠慢について書いた」せいだと主張した。その後、ベラルーシの首都ミンスクに戻るフライトに搭乗するために羽田空港に連れて行かれたと、国際ニュース専門チャンネル、フランス24は報じた。


選手に無断で出場登録

チマノウスカヤがインスタグラムに動画を投稿したのは、7月30日。そのなかで、ベラルーシ陸上チームの一部の選手がドーピング検査の不備で大会出場資格がないことが分かったため、コーチらが無断で自分を予定外の1600メートルリレーに出場者として登録したと説明している。チマノウスカヤには1600メートルリレーに出場した経験はない。

「コーチたちが事前に私に状況を説明し、リレーで400メートルを走ることができるかどうかを確認してくれていたら、ここまで激しく反応することは絶対になかった。でもコーチたちは私の知らないところで、勝手にすべてを決めた。私は情報を求めたが、無視された」と、彼女は動画で明かした。

BBCによると、この動画が投稿された後、ベラルーシ国営メディアはチマノウスカヤを批判した。あるテレビ局は彼女が「チームスピリット」を欠いていると評した。

チマノウスカヤによれば、8月1日にコーチらが部屋に来て、荷造りを命じられた。そして彼女は羽田空港へ連れていかれた。同選手は2日の陸上女子200メートルと5日のリレーに出場予定だった。CNNによると、ベラルーシ当局はチマノウスカヤを東京時間1日午後10時50分発の便に搭乗させる予定だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米8月の貿易赤字、23.8%減の596億ドル 輸入

ワールド

独財務相「敗者になること望まず」、中国の産業補助金

ワールド

EU、AIとプライバシー規制の簡素化案を公表 厳格

ワールド

26年サッカーW杯、低調な米国観光業に追い風 宿泊
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、完成した「信じられない」大失敗ヘアにSNS爆笑
  • 4
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 5
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 6
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    衛星画像が捉えた中国の「侵攻部隊」
  • 9
    ホワイトカラー志望への偏りが人手不足をより深刻化…
  • 10
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中