最新記事

アメリカ政治

バイデンの真価が問われる5つの課題、最大の敵は中国ではない

BATTLE FOR THE SOUL OF THE NATION

2021年7月21日(水)17時52分
グレン・カール(本誌コラムニスト、元CIA工作員)
米バイデン大統領(イラスト)

ILLUSTRATION BY KYOJI ISHIKAWA FOR NEWSWEEK JAPAN

<トランプ流と決別し、中国に立ち向かう──新政権が臨む「アメリカの理念をめぐる戦い」とは>

ジョー・バイデン大統領は、昨年の米大統領選に挑んだとき、この選挙を「アメリカの理念をめぐる戦い」と呼んだ。当時のドナルド・トランプ大統領が象徴する専制政治と人種差別から、アメリカの民主政治を守らなくてはならないと感じていたのだ。

それに、専制主義的傾向を強める中国に対抗して世界の民主国家とグローバル経済を守り、人類の存続を脅かす地球温暖化に歯止めをかけることを避けて通れないとも思っていた。これらも「アメリカの理念」が問われる問題だと、バイデンは考えていた。

今年1月に大統領に就任して半年近く。これらの課題を達成するためにバイデンに残された期間は、あと1年半程度しかないのかもしれない。

来年11月の中間選挙では、バイデンの与党・民主党が議会の少数派に転落する可能性が濃厚だ。しかも、野党・共和党は政府の政策に片端から反対するつもりらしい。

それでも、バイデンが掲げている政策は非常に意欲的なものと言っていい。その政策は、主として以下の5つの領域に分けられる。

■新型コロナ対策

バイデン政権にまず求められているのは、新型コロナ対策だ。そのために、3月には総額1兆9000億ドルの「米国救済計画法」を成立させた。高額所得者を除くほとんどの国民への最大1400ドルの追加現金給付、失業保険の上乗せ給付期間の延長、学校再開の支援などが盛り込まれている。

一方、少なくとも1回以上ワクチンを接種した18歳以上の人は国民の60%を突破し、1月に1日25万人を超えていた新規感染者数は1万5000人を下回るようになった。アメリカの経済も軌道に乗り、今年の経済成長率は6.9%に達すると予想されている。

一連の新型コロナ対策は、アメリカ史上有数の規模の景気刺激策・所得再分配政策と言っていい。これは、中流層の生活を支援するというバイデンの経済政策全般の重要方針とも合致している。

■インフラ整備

アメリカではこれまで長年、インフラ整備への支出が減少していた。しかし、バイデンは2兆ドル規模のインフラ整備計画を提案している。その目的は、再生可能エネルギー(風力発電や太陽光発電など)に基盤を置く経済への転換を推進し、電気自動車を普及させることだ。インフラの近代化を地球温暖化対策の1つの柱と位置付けているのである。

バイデンは先頃、2兆ドルのうち1兆ドル分の計画に関して超党派の上院議員と合意したと発表した。その内訳は、運輸関連が3120億ドル、水道関連が550億ドル、高速通信関連が650億ドルなどだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

マクロスコープ:高市氏が予算案で講じた「会計操作」

ワールド

中国、改正対外貿易法承認 貿易戦争への対抗能力強化

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平の進展期待 ゼレンスキー

ワールド

中国外相、タイ・カンボジア停戦を評価 相互信頼再構
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中