最新記事

ヘルス

やっぱり危ない化粧品──米研究で半分以上に発がん性物質

Study Finds Cosmetics in U.S. and Canada Contain Cancerous Chemicals

2021年6月17日(木)15時45分
マシュー・インペリ
化粧品イメージ

PFASは皮膚から吸収されて体内に入る可能性もあるという misuma-iStock

<皮膚や涙管、目や口から体内に入り、永遠に蓄積されていく「フォーエバー・ケミカル」が野放しになっている>

米ノートルダム大学は、学術誌「エンバイロメンタル・サイエンス・アンド・テクノロジー・レターズ」に新たな研究報告を発表。アメリカとカナダで販売および使用されている化粧品の半数以上に、発がん性物質が含まれていると指摘した。

報告によれば、研究チームは数多くの化粧品から高濃度の有機フッ素化合物(PFAS、ピーファス)を検出した。「フォーエバー・ケミカル(永遠に残る化学物質)」として知られるPFASは、環境に悪影響を及ぼす可能性があり、「腎臓がん、精巣がん、高血圧、甲状腺疾患、新生児の低体重や子どもの免疫毒性」との関連も指摘されている。

<解説>「あなたも汚染されている?」 ──PFAS(フォーエバー・ケミカル)とは何か


研究チームは、コンシーラーやファンデーション、アイメイク用およびリップメイク用の200を超える製品について調べ、それぞれの製品に含まれるフッ素の濃度に注目した。研究報告と同時に発表されたプレスリリースによれば、「(フッ素濃度は)製品にPFASが使われていることを示す目印」だという。

調査の結果、全体の52%の製品から高濃度のフッ素が検出された。リップメイク用品は55%、液体状の口紅は62%、ファンデーション(リキッドおよびクリーム)は63%、コンシーラーは36%、マスカラは47%、ウォータープルーフマスカラは82%に高濃度のフッ素が含まれていた。

そのほかのアイシャドーやアイライナー、クリーム、化粧下地やペンシル類についても、全体の58%に高濃度のフッ素が含まれており、パウダー類や頬紅、ブロンザー、ハイライターやスプレー類などについても全体の40%に高濃度のフッ素が含まれていた。研究報告には、それがどのブランドの製品かは記されていない。

「血中にとどまり蓄積されていく」

ノートルダム大学の教授(物理学)で研究を率いたグラハム・ピーズリーは、「消費者がリスクにさらされていることに加え、日々何百万人もの消費者にこれらの製品を提供している業界の規模を考えると、きわめて憂慮すべき研究結果だ」と述べた。

「これらの化粧品は目や口の周りに使用するため、皮膚や涙管から体内に吸収されるおそれがある。口や鼻から体内に入る可能性もある。PFASは持続性のある化学物質で、血流に入り込むとそこにとどまり、蓄積されていく。製造や廃棄の過程で環境を汚染するリスクもあり、そうなるとさらに多くの人に影響が及びかねない」

また研究チームが、フッ素濃度が高かった29の製品についてさらに詳しく調べたところ、これらの製品には4~13種類のPFASが含まれていたことが分かった。この中で製品の成分表示ラベルにPFASが記載されていた製品は、1つだけだったという。

「今回の研究結果は、幅広い化粧品にPFASが使用されていることを示している。重要なのは、アメリカでもカナダでも成分表示に関する規制が十分ではないため、化粧品にどれだけのフッ素化合物が使用されているのかを推定するのが難しいことだ」とピーズリーは述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB追加利下げは慎重に、金利「中立水準」に近づく

ビジネス

モルガンS、米株に強気予想 26年末のS&P500

ワールド

ウクライナ、仏戦闘機「ラファール」100機取得へ 

ビジネス

アマゾン、3年ぶり米ドル建て社債発行 120億ドル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 8
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中