エジプト、ガザ停戦仲介で存在感見せる 米バイデン政権との関係も前進
エジプトは、イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの停戦仲介に尽力し、その外交面の存在感は、イスラエルと国交正常化を進めている幾つかのアラブ諸国を圧倒した。写真はエジプトのシシ大統領。パリで昨年12月、代表撮影(2021年 ロイター)
エジプトは、11日間にわたって激しい戦闘を交えたイスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの停戦仲介に尽力し、その外交面の存在感は、イスラエルと国交正常化を進めている幾つかのアラブ諸国を圧倒した。
さらに人権問題でぎくしゃくするバイデン米政権との関係改善に苦労していたエジプトにとって、停戦仲介は同国と米国の風通しが再び良くなるという「成果」をもたらしてくれた。
これまでのイスラエルとパレスチナの紛争でもエジプトは仲介役を務めてきた。ただ専門家や外交官によると、今回は近年よりも目に見える形の取り組みが特徴だ。停戦から1週間が経過する中で、エジプトの安全保障当局者はテルアビブとパレスチナ自治区を何度も往復。何人かの同当局者は、31日の週にはハマス最高指導者のイスマイル・ハニヤ氏を含めたパレスチナ側の人物がカイロを訪問し、停戦のさらなる枠組み強化を進める予定だと明かした。
ハマス高官の1人はロイターに「エジプトと(同国の)シシ大統領の(停戦に向けた)より積極的な努力が、11日間の戦闘を通じて鮮明になった」と述べた。
ハマスのルーツはエジプトで違法認定されて徹底的な取り締まりの対象である「ムスリム同胞団」だが、エジプト政府はハマスとの間にしっかりした情報網を確立している。ある外交官は、エジプトがシナイ半島-ガザ間の国境における安全保障を重要視している以上、ハマスの対応は「非常に現実的」なものだと解説した。
アブラハム合意
エジプトに比べて、他のアラブ諸国がガザ地区の停戦実現に向けて果たした役割は限定的だった。そうした国には、エジプトと同じく数十年前にイスラエルと平和条約を結び、パレスチナと国境を接しているヨルダンや、ガザ地区に金融支援を提供していたカタールなどが含まれる。
事態の沈静化を呼び掛けたアラブ首長国連邦(UAE)も影は薄かった。同国は、トランプ前米政権が主導したアラブ諸国とイスラエルの国交正常化のための平和協定「アブラハム合意」に真っ先に署名。その後バーレーン、スーダン、モロッコが加わったこの協定成立で、エジプトの中東地域における影響力が弱まるのではないかとの観測が浮上した。だが今回のガザ地区の戦闘を巡ってアラブ社会でパレスチナへの同情が急速に高まるとともに、これらの署名4カ国は実に難しい立場に追い込まれたのだ。
米シンクタンク、アラブ・ガルフ・ステーツ・インスティテュートのクリスティン・スミス・ディワン氏は、イスラエル・パレスチナ間が公然と衝突した中で消極的行動に終始したアブラハム合意署名国が、イスラエルの振る舞いをいかにコントロールできないかが浮き彫りになったと指摘した。
UAE外務省は、同国がイスラエルに戦闘行動の自制を実際に働き掛けたかどうかについてコメントを拒否した。