最新記事

韓国

韓国・株投資熱狂 投資を目的とする借入金も増え、家計債務世界1位に

2021年1月20日(水)17時15分
佐々木和義

一方、株価は日本の輸出管理強化直後に2000を割り込み、韓国で新型コロナウイルスの第1波が拡散した20年3月には1500台まで落ち込んだが、米韓(為替)スワップの締結を受けて急騰、6月以降、2100台から2300台で推移した。

新型コロナウイルスの影響による経済の悪化が長引き、中小企業の多くが存続の危機に立たされる一方、半導体メーカーのサムスンやSKハイニックスが特需を受けるなど、大企業は概ね堅調だ。

政府が不動産価格の安定化を目論んで、不動産売買の規制策を打ち出すと、富裕層は不動産投資から株式投資にシフトした。

また、不動産の高騰で「マイホームを買うには、株式投資で資産を増やすしかない」と考える人が現れ、マイホームの夢が遠ざかった人々が証券市場に参入、さらには、コロナ禍の長期化で将来に不安を抱え、株で稼いで経済的な自由を手に入れたいと考える若者も現れた。新たに500万人から600万人が新たに証券市場に参入したとみられている。

事実上、世界1位の家計債務国に

株式市場に殺到する資金の多くは借金だ。コロナ禍で事業資金や生活費の借り入れが増える一方、株式投資を目的とする借入金の申し込みも増えている。年収7千万ウォンの銀行員は1億4千万を借金して株式投資をはじめたという。

2020年7月から9月期の政府、企業、家計の債務は4900兆ウォン近くに増加した。韓国の名目GDPは約1900兆ウォンで、21年の国家予算は555兆ウォン規模である。同期間に家計が金融機関から借り入れた資金は、前年同期の23兆4000億ウォンを30兆ウォン上回る53兆2000億ウォンで、過去最高額を記録した。

家計債務は国内総生産(GDP)の101.1%に当たる1941兆ウォンに達し、世界平均の65.3%、さらには消費が貯蓄を上回る過剰消費国の米国81.2%も上回り、事実上、世界1位の家計債務国となった。企業債務も世界平均の103%を上回る110.1%で、国際金融協会(IIF)が調査を行なった34か国の中で8番目に高い。

保守政権は、目標に掲げた株価を達成できず、証券業界は投資金が不動産に向かったと分析するが、実体経済を反映したとも考えられる。一方、革新政権は、財閥改革や市場透明性を掲げて、公正と分配を強調する。
機関投資家は守勢に回るが、個人投資家は支配構造の改善などを期待して投資が過熱する。実体経済が反映されるとは限らない。

KOSPIは1月11日に3266.23を記録したあと急落し、3000台3週目の取引は3079.90で始まった。株式投資家のインターネット掲示板には「江南のマンションが一番の有望銘柄だが、政府が買えないように防いでいる」「株式もだめなら票で審判する」などと書き込まれている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏、和平巡る進展に期待 28日にトラン

ワールド

前大統領に懲役10年求刑、非常戒厳後の捜査妨害など

ワールド

中国、米防衛企業20社などに制裁 台湾への武器売却

ワールド

ナジブ・マレーシア元首相、1MDB汚職事件で全25
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中