最新記事

中国貿易

アメリカを抜いてEUの最大貿易相手国にのし上がった中国の戦略的勝利

China Celebrates Surpassing US in Trade with EU for the First Time

2020年12月7日(月)15時53分
トム・オコーナー

マスクや防護服など中国からの支援物資を受け取るドイツ軍兵士(4月27日、ライプツィヒ) Hannibal Hanschke-REUTERS

<新型コロナ危機をきっかけに、アメリカに代わってEUの最大貿易国にのし上がった中国は大喜び。アメリカも中国の欧州進出に警戒感を高めるが>

EUの最大の貿易相手国という新たな立場を、中国は経済の急成長による成果のひとつとして歓迎している。だが国際秩序における中国の台頭は、アメリカだけなく、他の西側諸国からも懸念と批判を引き起こしている。

12月4日の記者会見で、中国外務省の華春瑩(ホァ・チュンイン)報道官は、先日発表されたEUの貿易統計の結果を「中国とEUの両方にとって良いニュース」と称賛した。

欧州連合統計局(ユートスタット)が発表した統計によると、今年の1月から9月までの対中貿易額は4255億ユーロ(約5168億ドル)で、同時期の対米貿易額4125億ユーロ(約5010億ドル)を追い越した。

重要な月は7月だった。統計の発表に伴うユートスタットの説明によれば、「2020年の最初の9カ月間、EUの最大の貿易相手国は中国だった」。

「この結果は輸入の増加(+4.5%)によるもので、輸出は横ばいだった。同時に、対米貿易は輸入(-11.4%)、輸出(-10.0%)ともに大幅に減少した」

華報道官は、この結果は中国と欧州が強固な関係を築いている証拠だと述べ、EUは何年も前から中国にとって最大の貿易相手国となっており、この関係はさらに大きく発展する余地があると語った。

「互いに重要な貿易相手国である中国とEUは、経済において相互に補完的な役割を果たしている。協力関係にある広い分野における可能性は非常に大きい」

米中の熾烈な争い

EUの貿易におけるアメリカと中国の順位の入れ替わりは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が世界経済に打撃を与えるなかで起きた。新型コロナウイルス感染症は中国で最初に発生したが、中国は早い時期に流行を食い止め、貿易を再開させた。

だが他の国々、とくに西側諸国では新型コロナが荒れ狂い、感染者と死者の数は日々増え続けている。なかでもアメリカは最悪の状態だ。

中国とアメリカは国際舞台における立場を示すために世界各国に競って支援を提供し、時には相手を貶めるような動きもあった。

欧州諸国も新型コロナで大打撃を受け、国全体のロックダウンや日常生活の様々な混乱に苦しむなか、最新の貿易統計は「中国とEUの経済貿易関係の回復力と可能性を示している」と華は語り、この関係は欧州と中国のどちらにとっても幸先がいい、と主張した。

「中国とEUの貿易の急成長は、社会経済の発展を強力に後押しし、互いに国民の生活を改善した」と、華は述べた。

さらに、中国とEUが今年9月、農産物の相互貿易を促進するために地理的表示に関する保護協力協定に署名したことを指摘。「中国とEUの経済および貿易の協力関係をさらに拡大する」ための投資促進法に協議が進んでいると語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

-日産、11日の取締役会で内田社長の退任案を協議=

ビジネス

デフレ判断指標プラス「明るい兆し」、金融政策日銀に

ビジネス

FRB、夏まで忍耐必要も 米経済に不透明感=アトラ

ワールド

トルコ、ウクライナで平和維持活動なら貢献可能=国防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 5
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中