最新記事

東南アジア

インドネシア、人里離れた集落のキリスト教徒4人惨殺 ISとつながるイスラム系テロ組織MITの犯行

2020年11月29日(日)19時50分
大塚智彦

テロ組織に放火され燃え落ちた民家 KOMPASTV / YouTube

<ISと関連があるテロ組織が残虐な手法で村人を殺害した──>

インドネシア・スラウェシ島中部スラウェシ州で11月27日、人里離れた集落が武装したグループに襲われ、住民4人が殺害される事件がおきた。

現地治安当局は殺害を免れた住民らの証言や殺害された4人が全員キリスト教徒であることなどから、襲撃グループは同州ポソ周辺を本拠地として活動を続けるイスラム教系テロ組織「東部インドネシアのムジャヒディン(MIT)」である可能性が極めて高いと断定して捜査を続けている。

MITは中東のテロ組織「イスラム国(IS)」と関係があるとされる過激なテロ組織で、インドネシアの治安当局にとっては「ジェマ・アンシャルット・ダウラ(JAD)」と並びもっとも警戒すべき対象とされている。

国家警察や国軍は中部スラウェシ州を中心にMIT壊滅を目指した「ティノンバラ作戦」を継続中で、今回の事件を受けて周辺のジャングルや丘陵地帯などを中心に大規模な追跡を開始しているという。

焼死、斬首など惨殺された住民4人

地元警察がメディアに伝えた発表などによると27日、中部スラウェシ州の州都パルから南に約90キロ離れたシギ県ルンバントンゴア村を正体不明の武装グループが急襲。民家に放火するとともに住民4人を殺害した。4人のうち2人は焼死体で発見され、別の1人は斬首され、残る1人の遺体には複数の切り傷、刺し傷があったという。

連絡を受けて駆けつけた警察が、襲撃を逃れた住民に手配写真を見せて確認したところ、襲撃犯の中にMITの実質的な指導者で指名手配中のテロリスト、イシャック・イパ(別名アリ・カロラ)容疑者に酷似した人物が含まれていたとの証言を得た。

さらに殺害された4人がいずれもキリスト教徒であること、「斬首」という殺害方法などから治安当局ではMITによる犯行は間違いないとみている。

MITは同州を主な活動拠点として、キリスト教徒の住民や警察官などの治安部隊要員をターゲットにしたテロを数年前から起こしており、斬首などの残虐な殺害方法で知られている。

このためMIT壊滅のため2016年1月から「ティノンバラ作戦」が発動され、同州を中心に各地でMITのメンバーや支持者の摘発、逮捕、殺害が集中的に行われ、現在MITのメンバーは10人前後まで減少しているという。

追い詰められたMITによるテロ

MITはインドネシアのテロ組織「ジェマ・イスラムミア(JI)」の精神的指導者とされるアブ・バカル・バシル師が分派し創設した親IS系テロ組織「唯一神擁護共同体(JAT)」から2011年に分離創設した過激なテロ組織。中東のISから流れたテロリストやウイグル人も一時参加していたとされている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ハイネケン、25年ビール販売「小幅減」に下方修正 

ワールド

タイ中銀、金融緩和維持へ 景気回復を支援=議事要旨

ワールド

外相と協力して日米関税合意の実施に取り組む=赤沢経

ワールド

クリントン元大統領の証言調整、エプスタイン氏との関
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 5
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 6
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 7
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 8
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 10
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中