最新記事

生物

これまで12例しか目撃されていなかった深海イカが豪州で5匹確認される

2020年11月13日(金)18時00分
松岡由希子

長い足を持つミズヒキイカの生態はほとんど解明されていない YouTube

<水深1000〜4000メートルの深海に生息するイカの一種、ミズヒキイカの生態はほとんど解明されていないが、このほど豪州の水域で初めてその生息が確認された...... >

ミズヒキイカは、水深1000〜4000メートルの深海に生息するイカの一種で、大きなヒレに細長い足とフィラメントを持ち、エイリアンのような姿が特徴だ。体長は1.5メートル程度のものから7メートルに達するものもある。

これまで世界で12例しか目撃されておらず、その生態はほとんど解明されていないが、このほど豪州の水域で初めてその生息が確認された。

matuoka1113b17.jpeg

2001年、ハワイで目撃された 動画は次ページに YouTube

これまで世界で12例しか目撃されていなかった

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の研究チームは、2015年から2017年までの深海調査において、豪州南部グレートオーストラリア湾で計5匹のミズヒキイカの撮影に成功し、2020年11月11日、オープンアクセスジャーナル「プロスワン」でその研究論文を発表した。複数のミズヒキイカが見つかった例はこれまでほとんどなく、ミズヒキイカの生態のさらなる解明につながるものとして評価されている。

研究チームは、深海調査船「インベスティゲーター」で、グレートオーストラリア湾の深海の底生帯に生息する深海生物について大規模な調査を行っていた。2015年11月15日、「インベスティゲーター」に搭載されているカメラシステムは、水深2178メートルの地点で生息するミズヒキイカを初めてとらえ、その12時間後、6キロ離れた水深2110メートルの位置で2匹目のミズヒキイカを確認した。

Rare bigfin squid seen off the coast of Australia for the first time


5匹が相次いで見つかった

研究チームは、2017年3月、グレートオーストラリア湾の7地点で遠隔操作型無人潜水機(ROV)による調査を実施。3月24日に水深3060メートルの地点で3匹目が見つかった後、翌25日にも水深3002メートルの地点で4匹目、水深3056メートルの地点で5匹目が相次いで見つかった。

これら5匹はいずれも外観が異なっていたことから、別個体であるとみられる。2017年3月24日に撮影されたミズヒキイカは、体長が1.83メートルで、足やフィラメントの長さは胴体の11倍を超えていた。また、2015年11月15日に見つかった最初のミズヒキイカは、フィラメントを胴体に引き寄せてコイル状に巻きつける動作をしていた。このような動作はこれまでイカでは確認されていない。

研究チームは、グレートオーストラリア湾で複数のミズヒキイカが見つかったことについて「この水域がミズヒキイカのホットスポットかどうかはまだ明らかではない」としながらも、「『ミズヒキイカは汎存種である』との説を裏付けている」と述べている。また、空間的・時間的に近い状況でミズヒキイカが相次いで見つかったことから「ミズヒキイカの局所的な集中分布を示すものでないか」と述べている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英GDP、第3四半期は予想下回る前期比+0.1% 

ビジネス

英バーバリー、7─9月期既存店売上高が2年ぶり増加

ビジネス

レゾナック、1―9月期純利益90%減 半導体材料上

ワールド

焦点:中国の米国産大豆購入、国内供給過剰で再開は期
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編をディズニーが中止に、5000人超の「怒りの署名活動」に発展
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    ついに開館した「大エジプト博物館」の展示内容とは…
  • 8
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 9
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 10
    「麻薬密輸ボート」爆撃の瞬間を公開...米軍がカリブ…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 8
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中