30年前の北半球最低気温が「発見」される
Coldest Temperature Ever Recorded in Northern Hemisphere Uncovered
過去最低気温はグリーンランド氷床の観測所で記録されていた Lucas Jackson-REUTERS
<世界にはまだ埋もれた気温の記録がある。それを発掘すれば、温暖化の真のトレンドが見つかるかもしれない>
世界気象機関(WMO)は、約30年前に記録された-69.6℃が「北半球で記録された過去最低気温」だと認定した。
英国王立気象学会論文誌Quality Journal of the Royal Meteorological Societyに発表された検証結果によれば、この気温は1991年12月22日、グリーンランド氷床(南極大陸に次いで世界で2番目に大きな氷の塊)の頂上部近くに設置された自動気象観測システムが観測したものだ。
WMO気象気候アーカイブ委員会の「気候調査官」による調査の結果、観測から約30年を経てようやくこの記録が明らかになった。
気候調査官たちは、これまで長年見過ごされてきた気象データの分析・検証作業を行うのが任務で、今回のように時折、新たな記録を発見・公表している。
今度約3000メートルのところに設置されているグリーンランド氷床上の気象観測所は、WMOが世界の気象極値(最高・最低気温など観測値の両極端の値)の評価を始めるよりも前の1990年代前半に設置され、稼働していた。
これまでの「過去最低」を約2℃下回る
調査官たちは、かつてこの気象観測所の責任者だった複数の科学者(ウィスコンシン大学マディソン校)を見つけ出し、当時使われていた観測装置や観測方法を分析。さらに1991年12月の気象条件についても分析した上で、今回の「記録」を認定した。
WMOの極端気象・気候現象報告者であるランドール・チェルベニーは、声明で次のように述べた。「今回の調査は、今の気候科学者たちが現代の気候記録を確認できるだけでなく、過去の重要な気候記録を見つけ出し、質の高い長期的な気候記録を作成して、気候変動の影響を受けやすい地域のために役立てる能力があることを示している」
新たに認定された気温は、これまで過去最低と認定されていた気温を2℃近く下回る。これまでの過去最低記録は、ロシアのベルホヤンスク(1892年2月)とオイミャコン(1933年1月)に観測された-67.8℃だった。ちなみに世界最低記録は、1983年7月21日に南極のボストーク観測基地で観測された-89.2℃だ。