最新記事

人種差別

Kポップファンは正義の味方? 差別的なハッシュタグを大量のファンカムで乗っ取り「浄化」

K-Pop Fans Flood QAnon Twitter Hashtags to Silence Conspiracy Theorists

2020年6月8日(月)18時10分
ジェイソン・マードック

トランプの訪問を待つ医療関連会社の従業員。会社のTシャツの下にはQアノンTシャツが(5月14日、ペンシルバニア州アレンタウン) Carlos Barria -REUTERS

<アイドル動画の大量投稿で差別的な意見を圧倒するKポップファンのオンライン政治活動が活気づいている。ハッカー集団アノニマスと共闘し、陰謀論のQアノンも標的に>

ツイッターの差別的なハッシュタグを乗っ取るアメリカのKポップ・ファンの活動が勢いづいている。今週は陰謀論の巣窟である「QAnon(Qアノン)」と匿名掲示板サイト4chanの荒らしに関係するハッシュタグに集中攻撃を仕掛けている。

韓国のポップミュージック・ファンは以前から、数の力を使った大量投稿で気に入らないメッセージをかき消すという活動を行っていた。そのとき投稿に使ったのが、「ファンカム(fan cam)」と呼ばれる、韓国アイドルの短いビデオクリップだ。

かつては「米国を再び偉大に」と訴える#MAGA(メイク・アメリカ・グレート・アゲイン)や#WhiteLivesMatter(ホワイト・ライブズ・マター、白人の命は大事)など人種差別的なツイッターのハッシュタグを乗っ取るSNSキャンペーンの先頭に立ち、大量の投稿でスレッドを埋め尽くし、差別的なメッセージが見つからないようにしたことがある。

その膨大な数を利用して、黒人差別の解消を求めるBLACK LIVES MATTER(BLM、ブラック・ライブズ・マター、黒人の命は大事)」デモの参加者の違法行為を映した動画を送信するためのダラス警察のモバイルアプリを、通信不能にしたこともあった。

5月25日に黒人のジョージ・フロイドがミネソタ州ミネアポリスで警察官に殺害された事件をきっかけに全米で反人種差別抗議行動が広がりだすと、Kポップファン層のこうした活動はさらに活発になった。

ハッカー集団が戦いに参加

Kポップファンのターゲットになったハッシュタグには大量の投稿が流れこむため、トピックの多くがソーシャルメディア・プラットフォームでトレンド入りする。だがトピックをクリックすると出てくるのは、K-POPビデオやGIF、ミームばかりというわけだ。6月4日には、トランプ政権を支持する陰謀論者の集団Qアノンが新たな標的になった。

Kポップファン集団による活動が活発になったのは、デジタル抗議運動のパイオニアとして知られる世界的なハクティビスト(政治的な動機でハッキングを行う活動家)のネットワーク「アノニマス」の復活と時を同じくしていた。Kポップファンとリンクしたアノニマスの新しいムーブメントは#OpFanCamのハッシュタグのもとで展開されている。

700万人以上のフォロワーがいるアノニマスのツイッター@YourAnonNewsには、6月3日にこんなツイートが投稿された。「匿名のすべてのKポップの仲間たちよ! 地球をハックしよう!」

「われわれはみんなにBlackLivesMatter(BLM、黒人の命は大事)を理解してほしいし、BLMキャンペーンのために、あらゆる手を尽くすつもりだ。問題は警察の残虐行為であり、不当な人種差別のシステムだ」という5月31日のアノニマスのツイートは、最終的に10万件以上の「いいね」を集めた。

アノニマスの別のアカウント、@YourAnonCentralは、Qアノンのハッシュタグを再び標的とし、KPOPファンと一緒に攻撃すると宣言した。

<参考記事>ハッカー集団アノニマスが陰謀論のQAnonに宣戦布告
<参考記事>トランプ政権を支える陰謀論「QAnon」とは何か

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

-日産、11日の取締役会で内田社長の退任案を協議=

ビジネス

デフレ判断指標プラス「明るい兆し」、金融政策日銀に

ビジネス

FRB、夏まで忍耐必要も 米経済に不透明感=アトラ

ワールド

トルコ、ウクライナで平和維持活動なら貢献可能=国防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 5
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中