子供たちを食い物にする「孤児院ツアー」は偽善ビジネス
GOOD INTENTIONS DO WRONG
そもそも、ツアー客が「いい」孤児院と悪い孤児院を見分けることなど不可能だ。「いい」孤児院など存在しない。大災害や紛争などの影響で、一時的に施設への収容を必要とする場合はあるだろう。しかし原則に立ち戻るなら、やはり子供は施設よりも(誰かの)家庭で育つほうがいい。それに、貧しい国々では行政の監督が行き届かないから、孤児院が子供の人身売買や強制労働、搾取の温床になりやすい。
このように、孤児院ツアーは初めから破綻している。ツアー客の寄付がなければ孤児院の運営は成り立たず、子供たちが路頭に迷うという議論もあるが、とんでもない。そもそも子供たちの大半は、そんな施設に入る必要などなかった。孤児院ビジネスがなければ、その子たちは地域社会にとどまり、孤児院よりまともな環境に生きていたはずだ。客寄せのための孤児需要をなくせば、「孤児」の供給は自ずと減る。
いま孤児院に入れられている子供たちは「囚人化」の影響を含む数々のトラウマを抱えており、家庭的な環境での専門的ケアを必要としている。お金があるなら、そちらに寄付するのが筋だ。
<2020年3月24日号「観光業の呪い」特集より>
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2020年3月31日号(3月24日発売)は「0歳からの教育 みんなで子育て」特集。赤ちゃんの心と体を育てる祖父母の育児参加/日韓中「孫育て」比較/おすすめの絵本とおもちゃ......。「『コロナ経済危機』に備えよ」など新型コロナウイルス関連記事も多数掲載。