性的虐待への巨額賠償が、米ボーイスカウト連盟を破産に追い込んだ
Boy Scouts of America Files for Bankruptcy After Surge in Sex Abuse Lawsuits
米ボーイスカウト連盟が1950年にペンシルベニア州で開催した全国キャンプ大会 Courtesy U.S. National Park Service/REUTERS
<オレゴン州の裁判では、数百人の加害者の性的虐待を記した内部文書が明らかになっていた>
ボーイスカウトアメリカ連盟は、過去の性的虐待に関する数百件の賠償訴訟によって巨額の賠償の支払いに直面する見通しとなったことから、18日に破産申請を行った。
デラウェア州の裁判所に提出された破産申請によると、連盟の負債は10億ドルという膨大な金額に上り、連盟の資産は100億ドルとされている。
創設から100年以上の歴史を誇り、現在も200万人の青少年メンバーを抱える連盟は、全国で次々に提訴される賠償訴訟を受けて、2018年12月から破産申請の準備を進めていた。
今後は破産保護のもとですべての訴訟を統合して和解交渉に入り、最終的に一括の和解合意を目指すと見られている。
チームドクターが複数の女子選手に性的暴行を続けたアメリカ体操連盟の性的虐待事件や、全米各地のカトリック教会が児童への性的虐待を行っていた事件でも、今回と同様の手法が巨額な賠償責任への対処法として採用されている。
連盟のジム・ターリー全国議長は破産申請に際して、「連盟は(被害者の)皆さんを信じているし、必ず賠償に応じる。皆さんと家族にカウンセリングを提供するプログラムも用意している」と、被害者と家族に呼び掛けた。被害者への賠償を進めるうえで信頼を維持するために破産を宣言した、とターリーは話している。
体面を優先させた連盟
連盟を破産に追い込んだ一連の訴訟のきっかけになったのは、2010年にオレゴン州の裁判所が、連盟に対して過去最高の1850万ドルの損害賠償の支払いを命じた判決だった。
ニューヨーク・タイムズの報道によると、この裁判の弁護人ポール・モーンズが、当時この事件が氷山の一角でいずれは連盟を破産に追い込むことになると同僚と話し合っていた、と報じている。さらにモーンズは、連盟は長年に渡る被害者への賠償基金を設立することもなく、体面を保ち続けようとした、と語っている。