最新記事

新型コロナウイルス

【新型肺炎】東京五輪開催、間に合うか? ロンドンが代替開催に名乗り

Will the 2020 Olympics be Cancelled?

2020年2月20日(木)17時40分
ダン・キャンチアン

WHO(世界保健機関)のアドバイザーも務めた押谷が最も懸念しているのは、「武漢タイプ」の集団発生がアフリカかアジアのほかの地域で起きる事態で、そうなれば東京五輪の開催は難しくなると見ている。

「今はそうした事態を防ぐために全力を尽くすべきだ」

IOCは今後5カ月間に可能なあらゆる措置を取ると述べ、五輪開催に自信を示している。

「われわれはWHOと連絡を取り、IOCの医学専門家とも協議を続ける......関連当局、特に日本と中国の当局が状況に対処するために必要なあらゆる措置を取ることに全幅の信頼を置いている」

日本では3月から19のテストイベント(この夏の五輪に向けた最終的なリハーサル)が行われる予定だが、現時点ではすべて予定どおり実施できるか分からない。

1896年にアテネで近代五輪の歴史が幕を開けて以来、第1次・第2次大戦中を除いて、オリンピックが中止されたことは一度もない。

冷戦の緊張がピークに達した時期でさえ例外ではない。1980年のモスクワ大会は、旧ソ連のアフガニスタン侵攻に抗議して、アメリカとそれに賛同する65カ国がボイコットし、その報復として旧ソ連圏の国々が4年後のロサンゼルス大会をボイコットしたが、大会自体は決行された。

冬季五輪も2つの大戦中に中止されただけだ。ただ、1976年の大会は米コロラド州デンバーで開催されるはずだったが、招致決定後に財政負担や環境破壊で住民が反対運動を起こし、オーストリアのインスブルックに場所を変更された。

ロンドンが代替開催も?

ブラジルのリオデジャネイロで開催された前回の夏季五輪では、同国で猛威を振るっていたジカ熱の感染を警戒して、自転車競技のティジェイ・バン・ガーデレン、ゴルフのダスティン・ジョンソン、ジョーダン・スピースらアメリカの選手、イギリスのゴルファーであるローリー・マキロイ、テニスのスター選手のミロシュ・ラオニッチ、シモナ・ハレプ、カロリナ・プリスコバらが参加を見合わせた。

やはり新型のコロナウイルスによるSARS(重症急性呼吸器症候群)の集団発生で、中国南部で350人近い死者が出た2003年には、国際サッカー連盟(FIFA)は中国で開催される予定だった女子ワールドカップを前回の開催国アメリカで行うことにした。2月20日には、ロンドン市長選の主要候補2人が、東京開催が無理になった場合は、2012年の五輪主催国として代替開催の用意があると名乗りを上げた。

WHO西太平洋地域事務局長を務めた感染症の専門家・尾身茂は2月13日、夏までに感染拡大が収まっているかどうか現時点で予測することはほぼ不可能だと述べた。

「率直に言って、今は新型肺炎が五輪開始前に終息すると判断するに足る十分な科学的根拠はない」

尾身は「いつ終息するかを論じることには意味がない」として、ウイルスが既に日本に広がっているという前提で対策を立てねばならない、と警告した。

20200225issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年2月25日号(2月18日発売)は「上級国民論」特集。ズルする奴らが罪を免れている――。ネットを越え渦巻く人々の怒り。「上級国民」の正体とは? 「特権階級」は本当にいるのか?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中