温暖化でヒグマが冬眠できない!──ウクライナ
Bears in Ukraine Aren't Hibernating Because It's Too Warm
暖冬で眠れないヒグマが増えている Christian Charisius-REUTERS
<12月になっても冬らしい気温がまだ1週間しかないウクライナ南部では、保護している約30頭のヒグマのうちまだ3頭しか冬眠に入れない異常事態が続いている>
異常な暖冬で、ウクライナのヒグマが冬眠できずにいると、自然保護活動家が訴えている。ウクライナ南部の国立自然保護区の保護センターによれば、冬はすべてのヒグマが冬ごもりしていなければならないが、センターでリハビリ中のヒグマで冬眠したのはまだ3頭しかいない。
他の29~32頭は冬眠に入れない「クマの不眠症」を患っているという。保護センターで長年暮らしてきたヒグマのなかには冬眠の本能が衰えている個体もいるのは事実だが、去年はほとんどが冬眠した。冬にしては気温が高過ぎるのが原因だ、と関係者は言う。
同保護区周辺の気温は4℃前後で、12月の平均気温であるマイナス2.3℃を上回り、4月の平均気温6.9℃に近い。4月といえば、クマたちが冬ごもりから出てくる時期だ。
保護センターによれば、今年はまだ冬らしい冬が一週間しかない。その間に3頭は冬眠状態に入ったが、他のヒグマたちは霜が降りる天候を待っている、という。
<参考記事>地球温暖化で鳥類「血の抗争」が始まった──敵を殺し脳を食べる行動も
<参考記事>地球温暖化が生む危険な「雑種フグ」急増 問われる食の安全管理
気温が1度上がると冬眠が6日減る
米国立公園局によれば、クマの冬眠の長さは種や地域によって違う。メキシコのアメリカグマなら数日~数週間、アラスカのヒグマなら6カ月、という具合だ。冬ごもりで代謝を下げることによってクマは食料不足の冬と寒さを乗り切る。
気候変動はこのリズムに影響を与えているようで、たとえばアメリカグマの冬眠期間は徐々に短くなっている。
気温が1度上がるごとに、アメリカグマの冬眠は6日減る。ということは「2050年までにはこのクマの冬眠期間は15~39日短くなるかもしれない」と、イギリスの生態学者は2017年に指摘している。
2019年12月31日/2020年1月7日号(12月24日発売)は「ISSUES 2020」特集。米大統領選トランプ再選の可能性、「見えない」日本外交の処方箋、中国・インド経済の急成長の終焉など、12の論点から無秩序化する世界を読み解く年末の大合併号です。